Science/Research 詳細

強力な小型プラスチック顕微鏡を開発

November, 5, 2015, Washington--顕微鏡で血液を調べるだけで人の免疫システムの状態について多くの情報が得られる。例えば、白血球の数が異常に多い、または少いことは骨髄の病気かAIDSを示唆している可能性がある。白血球の破裂は、細菌感染かウイルス感染の兆候かも知れない。奇妙な形の白血球は、ガンを示唆している場合が多い。
 この旧い単純な技術が、遺伝子配列、フローサイトメトリ、蛍光タギングなどハイテクヘルスケアの時代に興味深い先祖返りとなるかも知れないが、このような技術の高いコストとインフラ設備がこうした技術を主にラボ設置に限定している。これは診療現場(POC)が修正を目指しているものである。グローバルヘルスイニシアチブBill and Melinda Gates Foundation’s Grand Challengesが資金を提供するプロジェクトで、ライス大学の研究チームは先頃プラスチックの小型デジタル蛍光顕微鏡を開発した。これは、近代的なラボからほど遠い世界の農村部の患者の白血球レベルを量ることができる。
 「このプロジェクトを推し進める見地の1つは、サンプルつまりサンプル調整のコストである。POCアプリケーションで使っている多くのシステムは、非常に高価なカートリッジを持つ。この研究の目標は、貧しい地域で扱いやすい価格で必要な試験ができるようにすることである」とライス大学生体工学部、Tomasz Tkaczyk准教授は説明している。
 研究チームのデバイスは、複合アクリジン・オレンジ染色と混ぜた一滴の血液で、リンパ球、単核白血球、顆粒球(白血球の3タイプ)を特定し量る。複合物は中性pHの水ではじかれるので、それは細胞や核膜を通して簡単に拡散し、DNAあるいはRNAに出遭うとそれぞれ緑、赤に変わり、525nmと650nmで発光極大を示す。これらの発光ピークに顕微鏡を最適化することで研究チームは、わずか20マイクロリットルの染料、20マイクロリットルの血液、カバースリットを持つガラススライドで構成されるサンプルで白血球を量ることができる。
 Tkaczykは、「白血球をカウントすることができる。デバイスは最高解像度を必要としない。ここで実際にフォーカスしているのは形態ではなく、1µmオーダーの単一細胞が解像できればよいからである」と説明している。
 色の比率により研究者は、リンパ球、単核白血球、顆粒球を区別することができる。この点は重要である。白血球のこの3つの部分のカウントは、多くの病気の診断で最初の基本的なステップだからである。
 顕微鏡の対物レンズの作製には、これはポリスチレンレンズと2枚のポリメチル・メタクリレート非球面レンズで構成されているが、研究チームは一点ダイヤモンド回転旋盤を用いた。次にレンズをオールプラスチック、3Dプリント顕微鏡ハウジングと対物レンズに組み込んだ。出来上がると、顕微鏡の視野は1.2㎜となり、白血球を量ると統計的に有意な、少なくとも130の白血球が視野に存在する。さらに、顕微鏡は、一旦組み立てられると、サンプル間の手動調整は不要である。
 プロトタイプ顕微鏡は、LED光源、電力供給、制御ユニット、光学系、イメージセンサを含み、組立コストは3000ドル以下。製造レベルが10000ユニットになると、この価格は1台あたり600ドルに落ちると研究チームは見ている。テストコストは数セントである。
 さらに研究チームの今後の取り組みには、白血球特定の自動アルゴリズムの開発、他の従来の血液分析機器と白血球百分率の比較も含まれる。LED、リフレクタ、USBディテクタなどローコストのコンポーネントの利用、オールプラスチックのハウジングやレンズと併せると、プロトタイプの将来バージョンは量産可能になる。