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タンパク質の非常に速い構造変化を計測する新手法を開発

July, 9, 2015, 和光--理化学研究所(理研)田原分子分光研究室の乙須拓洋客員研究員、石井邦彦専任研究員、田原太平主任研究員の研究チームは、タンパク質分子の非常に速い構造変化を追跡する新しい計測手法を開発した。
 タンパク質にはさまざまな機能があるが、機能を発揮するためには特定の立体構造(天然構造)を取る必要がある。タンパク質の構造変化は分子認識などの機能に密接に関わっているため、タンパク質の構造変化を理解することはきわめて重要。しかし、どのようなメカニズムでタンパク質が自発的に構造を変化させ、天然構造が形成されるのかはいまだ明らかにされていない。
 タンパク質の構造変化を詳細に調べるためには、一個のタンパク質分子に着目して、その構造が自発的に変化する様子を観察するのが最も直接的なアプローチ。このために一分子FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)と呼ばれる方法が開発され、天然構造形成などタンパク質の構造変化が関わる現象の研究に応用されてきた。しかし、既存の一分子FRETは測定の時間分解能がサブミリ秒(数千分の一秒)程度だったため、数マイクロ秒(µs)で起こる速い構造変化を捉えることができなかった。
 研究チームは、一分子FRETの時間分解能を向上させるため、蛍光寿命という量に着目し、二次元蛍光寿命相関分光法(2D-FLCS)という新しい解析法を開発した。2D-FLCSを用いると、数マイクロ秒(µs)以下の時間分解能でタンパク質の構造変化を調べることができる。また、測定結果を二次元マップ上に可視化することで、複数の中間構造がある複雑なケースでも直感的に構造変化を把握することができる。2D-FLCSを用いてシトクロムcというタンパク質の構造変化の過程を調べ、約5µsで起こる分子レベルの構造変化が検出されるなど、タンパク質では非常に複雑な構造変化が起こっていることが分かった。
 折れ畳みが最も速いタンパク質の構造変化は数µsで起こると考えられている。既存の一分子FRET計測では、これを実験的に捉えることができなかったが、2D-FLCSを用いることでこのような数マイクロ秒の時間領域の構造変化が見えるようになった。これにより、スーパーコンピュータ「京」に代表される最新鋭の計算機を用いたタンパク質の分子シミュレーションと直接比較可能な実験データを提供できるようになる。このような理論計算と実験の連携を進めることで、タンパク質の折れ畳み過程や様々な働きの詳細をより効果的に解明できると期待できる。
(詳細は、www.riken.jp)