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磁場依存誘導放出を世界で初めて計測

September, 6, 2022, Freiburg--医療ケアでは、心臓や脳の活動の磁場を計測して早期に病気を検出する。最小磁場の計測でFraunhofer IAFの研究者は、新たなアプローチに取り組んでいる。ダイヤモンドベースレーザ閾値磁場測定。
 アイデアは、レーザシステムで高密度窒素空孔中心ダイヤモンドを使う。今回、研究チームは、マイルストーンを達成した。磁場依存誘導放出の世界初の計測を実証し、新たなコントラスト記録さえ達成できた。したがって、初めてレーザ閾値磁場計測の原理を実証した。その結果は、Science Advancesに発表された。

医療診断では、高感度センサが必要である。例えば、人体の心臓や脳の活動(MCG, MEG)の弱い磁場を計測し、MRIによって身体の画像を生成する場合である。これにより、初期段階で病気の検出ができる。

しかし、必要な精度を達成できるのはわずかな数の高感度磁場センサであり、その各々は臨床アプリケーションには大きな技術的障害となる。

すでに確立されたSQUIDセンサは、-270℃程度の複雑な極低温冷却を必要とする。蒸気セル磁力計(OPMs)は、もう1つのオプションである。これらは、極低温冷却なしでも最高感度を達成したが、地球の磁場を含む全ての背景磁場を絶対的にシールドする必要があるという欠点がある。したがって、部屋や建物に膨大な構造的な要件を課すことになる。このため、より不正確な電子計測(ECG, EEG)が日常的な臨床診断で引き続き一般的である。

フライブルクのFraunhofer応用固体物理学研究所IAFで、プロジェクトチームは、より適切な代替法をすでに研究している。「われわれの目標は、室温で動作し、背景磁場があっても動作する非常に高感度な磁場センサの開発である。したがって臨床実装にも役立つ」とDr. Jan Jeskeプロジェクトマネージャは説明している。

ダイヤモンドとレーザで最小磁場を計測
プロジェクト「超高感度レーザ閾値磁場計測のためのNV添加CVDダイヤモンド」(短縮“DiLaMag”)は、ドイツ連邦教育・研究省から助成を受けている。Jeskeと同氏のチームが、高感度量子磁場センサの世界でも類例のないアプローチを研究している。チームは、レーザシステムで初めてダイヤモンドを使用する。したがって、極めて正確な磁場計測が可能になる。

同プロジェクトのためにダイヤモンドは、高密度窒素空孔中心(NV中心)ドープとなっている。「その材料特性により、高密度NV中心を持つダイヤモンドは、レーザ媒体として利用されると計測精度を大きく改善できる」(Jeske)。ダイヤモンドのNV中心は、窒素原子と炭素欠陥で構成される原子系。それらは緑色光を吸収し、赤色光を放出する。これら原子的に小さなNV中心の蛍光が外部磁場の強さに依存しているので、高い局所分解能と優れた感度で磁場計測に利用できる。

レーザ閾値磁力計測の初の実験的デモンストレーション
数年の研究の後、Jeskeのチームは、重要なマイルストーンを達した。そのプロセスで磁場依存誘導放出の世界初の計測を実証した。そのプロセスで、研究チームは、興味深い発見をした。「われわれは、関連があるが、以前には知られていなかった物理的なプロセスをNVダイヤモンドに観察した。緑色レーザ照射で誘導放出された赤い光の吸収である」(Jeske)。

NVダイヤモンドをレーザ媒体として使用することで、誘導放出による信号パワーの64%増幅を達成しただけではなかった。プロジェクトチームは、世界記録までも達成できた。磁場依存放出は、33%のコントラスト、mW域で最大出力を示している。これは、NVアンサンブルで磁場計測における新しいコントラスト記録である。

誘導放出がこれに関与している。「この記録は、自然放出ではこれができないことをわれわれは示すことができた。したがって、レーザ閾値磁場計測の理論的原理を初めて実験的に証明した」とJeskeは協調している。

これらの結果値は、ダイヤモンドベースレーザ閾値磁場計測の従来の方法に対する利点を示しており、それが最小磁場を計測できることも証明している。

NVダイヤモンド作製で大きな進歩
 レーザ閾値磁場計測のコンセプトは、ダイヤモンドが、優れた光学特性を維持しながら、NV中心の高密度である限りで機能する。このため、プロジェクトチームは、材料の最適化のために広範な材料研究を行った。この研究に含まれるのは、CVDによるダイヤモンドの作製、他方で、電子照射による後加工、NV密度向上のための温度処理。

CVDによるダイヤモンド成長中、これは極めて正確で制御されたNV中心組込を可能にするが、研究者はすでに高い窒素ドーピング達成ができていた。電子照射を利用してチームは次に、窒素密度の最適フルエンスを確定し、その結果、NV密度20~70倍増となった。吸収スペクトルにより、チームはNV中心形成をライブ追跡できた。評価中、チームは、適切なNVアンサンブルのための3つの重要要素間の相関を確立し、それらを高NV密度に最適化した。高フルエンス照射を利用した置換窒素の高変換率、高電荷安定。

これら詳細な研究の結果、Fraunhofer IAFは、高密度NV中心と優れた品質のCVDダイヤモンドの作製に初めて成功した。したがって、極微小磁場計測のためのダイヤモンドベースレーザ閾値時速計の開発の必須条件を実現した。
(詳細は、https://www.iaf.fraunhofer.de/)