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不可視を可視にする新しい微小センサ

January, 27, 2022, Eindhoven--スマートフォンに収容可能な微小NIRセンサは,ミルクやプラスチックの化学物質含有量を分析できる。

TU/e研究グループは、新しい近赤外(NIR)センサを開発した。これは、簡単に作れ、サイズはスマートフォン内のセンサに匹敵し、産業プロセスモニタリング、農業に直ぐに使える。このブレイクスルーは、Nature Communicationsに発表された。

人の目は素晴らしいが、最も先進的な自然の光センサとは言い難い。「シャコ類の目は、16の異なるタイプの細胞を持ち、これらはUV光、可視、近赤外(NIR)光に感度がある。赤外スペクトルの計測は、産業および農業アプリケーションには最も興味深いが、一つの大きな問題がある。現在のNIR分光計は、大きすぎ、高価である」とKaylee Hakkelは説明している。

研究チームは、小さなチップに収まるNIRセンサを開発することでこの問題を解決した。シャコ類の目のように、それは16の異なるセンサを持つが、全ての近赤外に感度がある。「コストを低く抑えながら、そのセンサを微小化することが大きな課題だった。われわれは、これを達成するために新しいウエファスケール製造プロセスを開発した」。

「われわれは,多数のセンサを同時に作製できるので、それはローコストである。また、実世界の実用的なアプリケーションで直ぐに利用できる状態にある。センサチップは小さく、将来のスマートフォンにさえ内蔵可能である」(Hakkel)。

スペクトルセンシング
Eindhoven Hendrik Casimir Institute,応用物理学部、研究リーダー、Andrea Fioreは、チームの研究について、「われわわれは、長年、この技術に取り組んできた。われわれは、そのスペクトルセンサをチップに集積することに成功している。併せて、他の重要問題、データの効率的利用にも取り組んでいる」とコメントしている。

通常、センサが光を計測するとき、生成された信号は,その材料の光スペクトル、つまり光フィンガープリントの再構成に使われる。次に、センシングアルゴリズムを使用して、そのデータを分析する。

この新しいアプローチで研究者は、スペクトル再構成というステップが不要であることを示している。言い換えると、そのセンサが生成する信号を、直接分析アルゴリズムに送ることができる。「これは、デバイスの設計要件を大幅に簡素化する」とFioreはコメントしている。

牛乳とプラスチックの分析
センサを手に研究チームは、論文の筆頭著者の一人、Maurangelo Petruzzellaが説明したような多くの実験で、そのセンサをテストした。同氏は、スタートアップ、MantiSpectra社で働いている。「われわれは、そのセンサを使って、牛乳を含む多くの材料の栄養価を計測した。われわれのセンサは、従来の分光計と同様、牛乳の脂肪含量の予測で同等の精度だった。さらにわれわれは,様々な種類のプラスチックの分類にそのセンサを使った」。

牛乳の栄養価は、その経済価値を決める、またそのセンサは、これらの特性を正確に計測することが証明されている。さらに、これらの計測を使って,牛の健康をモニタできる。そのセンサを使ったプラスチックタイプの分類は、廃棄物選別の最適化に役立つ。

「これらのアプリケーション以外に、そのセンサが個人化ヘルスケア、精密農業(例えば、果物や野菜の成熟度をモニタリング)、プセスコントロル、lab-on-a-chipテストに使えるとわれわれは見ている。現在、この技術に基づいた完全な開発キット、SpectraPodが利用できる。企業や研究機関は、独自のアプリケーションを開発するために、それを使える。また、すばらしいことは、このセンサが、未来のスマートフォンでさえ当たり前になり、人々は、家庭でそれを使って食品の品質を調べ、健康状態をチェックできる」とPetruzzellaは、付け加えている。
(詳細は、https://www.tue.nl/)