Science/Research 詳細

プリンタブル有機デバイスで視覚を回復

June, 18, 2021, Sydney--シドニー大学のエンジニアは、ローコストの3Dプリント電気デバイスを開発している。これは、吸収された光を使い、ニューロンを発火させ、眼からの信号を脳に送る。つまり、視覚を失った人々の人工網膜として機能する。

Dr Matthew Griffithは、多色カーボンベース半導体から電気デバイスを作製した。これは、眼から脳に信号を送るニューロンを発火させるために、吸収した光を利用する、視力を失った人々の人工網膜として機能する。

網膜は、眼の奥を埋め尽くす薄い組織層であり、光を受けてそれを神経信号に変換し、これらの信号を処理のために脳に送る。

「世界で、視覚障害の人の数は、少なくとも22億人。われわれの研究の目的は、網膜色素変性や加齢黄斑変成(AMD)で失明を経験している人々に生体医学ソリューションを提供することである。AMDは、世界的に、失明の主因の1つである」とDr Griffithは話している。

同氏は、最終的にこの技術、一種の神経インタフェースを適用して、脊髄損傷の人々の感覚機能を回復し、神経変性疾患の人々を処置しようと考えている。神経インタフェースは、個々人の神経系と相互作用して活動を記録、刺激するデバイスである。

「他の機能の中で、ニューロンは身体の信号導体である。失われたニューロンリンク、例えば脊髄損傷が原因で失われたニューロン機能は、深刻な問題となる。ニューロンが発火しないと、それも弱体化する、これは失明や難聴の原因となり、パーキンソン病や癲癇のような病気の原因となる」と同氏は話している。

神経インタフェースは、これらの神経細胞の分裂を埋めるか、失火の場合、ニューロンを再プログラムする」。

Dr Griffithのデバイスは、新聞印刷と同じ低コストな方法、高速R2Rでプリント可能である。

「同じような技術が積極的に開発されているが、われわれのデバイスは、ヒトの細胞と同じ構成要素であるカーボンでできているという点で異なっている」。

他のデバイスは、硬くなりがちである。通常はシリコンあるいは金属製である。これらは、柔らかくて柔軟な人の身体への組込に問題がある。われわれのデバイスは、このような組織を考慮して設計されている」。

Dr Griffithは、NHMRC Ideas助成金を受け、シドニー大学、ニューカッスル大学の研究者とともに、そのプロジェクトに継続して取り組んで行く。

デバイスの機能の仕方
デバイスは、柔らかく、柔軟な表面に水ベースのインクでプリントされることが考慮されている。インクは、神経成長要素を含んでおり、次に外科医が患者の網膜に挿入する。

関連のニューロンがそれに再結合されると、網膜は、光刺激を受けて失われた機能を取り戻す。この段階で、Dr Griffithのチームは、マウスの脊髄と眼からとったニューロンを使って実験を行った。

初期の実験は、ペトリディッシュの半導体にマウスの神経細胞の成長を調べた、次にニューロンの電気活動がテストされた。

「これらの細胞が生存しているだけでなく、それらは成長し、神経機能を維持した」とDr Griffithは話している。

「次のステップは、ナノパタンをプリントすること、それらが成長する場所をコントロールすることである。これは将来、われわれが、脊髄あるしは網膜など特定の身体箇所に、それらを直接成長させられるということである」。

類似の視覚回復技術との違い
類似の技術が、視覚を回復するために眼と脳の両方を復元しようとしている。しかし、この方法は、より洗練されたアプローチを必要とする。

「患者は、ある程度の視覚を取り戻す、これは、失明していた人々にとっては間違いなく人生を変える。しかし、想定する高忠実なビジョンではない。現在の最先端の技術は、黒白の大きなぼやけた形状を生成する」とDr Griffithは言う。

もう1つの重要な違いは、Dr Griffithのデバイスが電気を必要としないことである。それは外部からの光で内的に電力を供給する。

「成功すれば、われわれのデバイスは21世紀の大きな科学的課題の1つを解決する方向への前進に寄与する。すなわち、人体の感覚ネットワークとコミュニケートできる。われわれは、光だけを使ってこれを実現したい。これによって未来の生体電子技術の実に素晴らしい展望が開ける」。

(詳細は、https://www.sydney.edu.au)