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生物学に触発されたロボット工学、トンボから学ぶ

March, 31, 2021, Kiel--キール大学の研究チームは、水中ハンターのエサを捕らえるデバイスを解読する。
 それは高速運動である。ほんの一瞬で、トンボ幼虫の口器が飛び出して獲物を捕まえる。数十年、研究者は、この動作が主に水圧によるものに違いないと仮定していた。今、初めて、キール大学の研究者が、トンボ幼虫の陰唇マスクとして知られる生体力学的機能原理を完全に解明した。動物学研究所のDr Sebastian Büsseをリーダーとするチームがこの発見に大いに貢献した。同研究所は、独自の仮定をテストするために採用された複雑な口器の動原理を持つ生体からヒントを得たロボットを開発している。ここで利用される技術は、迅速なロボットシステムの重要な増強につながる。その意欲的な研究プロジェクトの成果は、Science Roboticsに発表された。

ロボットでモーションシーケンス実証
 「生物からヒントを得たロボットの主要な利点の一つは、他の方法ではチェックが非常に難しい生物学的機能原理についての考えをテストする機会が得られることである。ロボットで理想的なところは、それが2方向で機能すること。われわれは生物学について何かを学び、技術に適用できる何かを開発する」と論文の筆頭著者、Büsseはこのプロジェクトの背後にある方法論について説明している。

様々な学際的分析技術を使いチームは、まず、陰唇マスクの動作原理を解明することができた。計算により、その筋肉組織が、付加的エネルギー蓄積なしには、観察された動きをするために十分な出力がないことが明らかになった。トンボ幼虫口器のジェット推進力は、制御可能なカタパルトシステムのように機能する。トンボの頭の内部弾性構造は、張力バネのような筋肉で保持されている。ここに、筋肉のエネルギーが蓄積されている。陰唇マスクの2つのセグメントは、相互に接続されていて、共有構造で固定され、作動する。

キールのエンジニアによると、この種のシステムは動物界に広く存在し、例えば、キリギリス、セミ、シャコなどに見つかる。しかし、トンボ幼虫の場合の特徴が、同期デュアルカタパルトシステムと説明されたのはこれが初めてである。「一つの構造内に存在するが、独立に負荷がかかる2つのカタパルトである。それらは、協働して高精度に陰唇マスクを制御する」とプロジェクト参加の学生、Alexander Köhnsenは説明している。

より効率的なロボットシステム構築に生体力学を利用
「われわれは、理解を深めるために、プロセスの3Dアニメーションを使い、複雑なモーションシーケンスについてのわれわれの仮定を可視化した。一つのシステムで2つのカタパルトを独立に制御できることは、全般的な制御が向上すること。これは、例えば、特別に敏捷なロボットの開発に適用できる技術になる」(Köhnsen)。
「われわれのシステムは、ジャンピングなど、カタパルト駆動プロセスの制御を容易にする。そこでは付加的制御と安定化システムを小さく軽量にする必要がある。それは、この種のロボットの性能と効率を改善する」とプロジェクトリーダー、Büsseは話している。
 最初のトライアルは、すでに完了している。その仮定をテストするために、研究チームは3Dプリンティングを使ったロボット作製に成功した。機能形態学と生体力学部長、Stanislav N. Gorb教授、研究のシニアオーサは、「構造と運動の多様な最新の分析の後、生物からヒントを得て機能するロボットを、ここキールで開発したことはすばらしい。その特殊な構造により、われわれは、生物学的モデルの動作原理をさらに詳細に洞察できるようになる」と同氏は話している。

(詳細は、https://www.uni-kiel.de)