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IBS、完全なままの頭蓋を通して見ることができる新タイプ顕微鏡

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March, 5, 2021, Seoul--新開発の顕微鏡は、ハードウエアとソフトウエアベース適応光学の組合せを利用して、対象画像を再構成する。
 非侵襲的顕微鏡技術、光コヒーレンス顕微鏡や2光子顕微鏡は、生きた組織の生体イメージングに一般に利用されている。光が、生体組織のような混濁物質を透過するとき、二種類の光が生まれる。弾道フォトンと多重散乱フォトンである。弾道フォトンは、偏光なしで物体を直線的に透過する。したがって対象画像の再構成に利用される。一方、多重散乱フォトンは、光がその物質を透過する際、ランダムな偏光によって生成され、再構成画像にスペクルノイズとして顕れる。光の伝搬距離が長くなればなるほど、多重散乱と弾道フォトンとの間の比率が劇的に増加し、画像情報が不鮮明になる。多重散乱光によって生まれるノイズに加えて、弾道光の光学収差も、画像再構成プロセス中にコントラスト低下や画像のブレを起こす。

特に骨組織は、多くの複雑な内部構造を持ち、これが厄介な多重光散乱や複雑な光学収差の原因となる。完全なままの頭蓋を通したマウスの光学イメージングになると、強いスペクルノイズと画像歪のために、神経系の微細構造の可視化は難しい。これは神経科学の研究では問題である。マウスはモデル生物として広く利用されているからである。現在利用されているイメージング技術の限界のために頭蓋は除去されるか、顕微的に薄くして下部の脳組織の神経網を調べなければならない。

したがって、生きた組織をより深く撮像するために他のソリューションが提案されてきた。例えば、3光子顕微鏡は、近年、マウス頭蓋下のニューロンの撮像に成功している。しかし、3光子顕微鏡は、低いレーザ繰り返しレートの制約を受ける。赤外域の励起ウインドウを利用するからである。これは、生体イメージング中に生きた組織を損傷する。また過度な励起パワーであり、これは2光子アプローチと比べて光退色がさらに拡大することを意味する。

最近、IBSの分子分光学と動力学センタのCHOI Wonshik教授をリーダーとするチームが、深部組織光学イメージングで大きなブレイクスルーを達成した。研究チームは、完全なままのマウス頭蓋を通して撮像できる新しい光学顕微鏡を開発した。これにより、空間分解能を失うことなく脳組織の神経網の顕微マップを獲得できる。

その新しい顕微鏡は、反射マトリクス顕微鏡(RMM)と名付けられ、ハードウエアとコンピュータ補償光学(AO)両方のパワーを統合している。AOは元は、光学収差を補正するために地上の天文学のために開発された技術である。従来の共焦点顕微鏡は、照明の焦点でのみ反射信号を計測し、焦点の光以外の全てを捨てるが、RMMは焦点以外の位置の全散乱フォトンを記録する。散乱フォトンは次に、新しいアルゴリズム、チームが2017年に開発した、単一散乱閉グループ蓄積(CLASS)を使い計算補正される。そのアルゴリズムは、全ての散乱光を利用して選択的に弾道光を抽出し、厄介な光学収差を補正する。ほとんどの従来のAO顕微鏡システムは、天文学のAO利用と同様にガイドスタートして明るい点のような反射あるいは蛍光物体を必要としているが、これと比較してRMMは、蛍光ラベリングなし、ターゲット構造に依存することなく機能する。加えて、補正できる収差モード数は、従来のAOシステムよりも10倍以上多い。

RMMは、ライフサイエンス分野ですでに広く利用されている従来の2光子顕微鏡を直接統合できる点で、大きな利点がある。2光子顕微鏡が経験する収差を除去するために、研究チームはRMM内にハードウエアベースのAOsを導入して、マウス頭蓋の収差を打ち消した。チームは、マウス頭蓋背後のニューロンの樹状突起棘の2光子蛍光画像を撮ることで、その新しい顕微鏡の能力を示した。空間解像度は回折限界に近かった。通常、従来の2光子顕微鏡は、頭蓋から脳組織を完全に取り除くことなしには樹状突起棘の繊細な構造を解像することはできない。これは極めて重要な成果である。研究グループは初めて、完全なままの頭蓋を通して神経網の高解像度イメージングを実証したからである。今後は、最も自然な状態でマウス脳を研究することが可能になるのである。

YOON Seokchan研究教授とこの研究に取り組んだ院生LEE Hojunは、「波面歪を補正することでわれわれは、光エネルギーを生きた組織の所望の箇所に集光できる。われわれの顕微鏡により、他のどんな手段でも解像できない、生きた組織の微細な内部組織深部を研究することができる。これは、早期の病気診断や神経科学研究促進に大いに役立つ」とコメントしている。

研究チームは、次の研究の方向をその顕微鏡の小型化、イメージング速度向上としている。目標は、臨床で使える高イメージング深度のラベルフリーRMMの開発である。

(詳細は、https://www.ibs.re.kr)