Science/Research 詳細

新たな近赤外光線免疫療法の応用、小細胞肺癌を光で破壊

February, 5, 2020, 名古屋--名古屋大学などの研究グループは前臨床研究として、DLL3を分子標的とする小細胞肺癌に対する近赤外光線免疫療法の開発に成功した。
 小細胞肺癌は悪性度の高い腫瘍で、治療の選択肢は限られている。小細胞肺癌に対する新たな治療標的として、近年、DLL3 という細胞表面にあるタンパク質が注目されている。DLL3 を標的とするRova-T という薬剤が開発され、臨床試験が行われてきたが、効果と副作用に問題があり、開発中止となった。そのため、DLL3 を標的とする新たな治療法が求められている。
 近赤外光線免疫療法は2011年に米国立がんセンター(NCI/NIH)の小林久隆博士らにより報告された新しい癌治療法。癌細胞が発現するタンパク質を特異的に認識する抗体と光感受物質 IR700の複合体を合成し、その複合体が細胞表面の標的タンパク質に結合している状態で近赤外光を照射すると細胞を破壊する。研究では人に投与された実績のある抗ヒト DLL3 抗体を用い、IR700 の複合体を合成し、細胞実験と動物実験において DLL3 を標的とする小細胞肺癌に対する近赤外光線免疫療法の効果を証明した。
 研究成果は、学術出版社 Cell Pressと The Lancet から共同発行されている科学誌「EBioMedicine」(電子版)に掲載された。
(詳細は、https://www.med.nagoya-u.ac.jp/)

研究グループ
名古屋大学大学院医学系研究科呼吸器内科学博士課程4年磯部好孝大学院生(筆頭著者)、同大高等研究院・最先端イメージング分析センター/医工連携ユニット(若手新分野創成研究ユニット)・医学系研究科呼吸器内科学の佐藤 和秀 S-YLC 特任助教(責任著者)、同大未来社会創造機構・最先端イメージング分析センター/医工連携ユニット(若手新分野創成研究ユニット)の 湯川 博 特任准教授、同大医学系研究科呼吸器外科の 芳川豊史 教授、同大大学院工学研究科の 馬場 嘉信 教授および国立病院機構名古屋医療センターの 長谷川 好規 院長。