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抗体を検出する光る紙チップを開発 -感染症の早期発見

October, 10, 2018, 東京--慶應義塾大学理工学部応用化学科のチッテリオ ダニエル教授の研究グループは、アイントホーフェン工科大学(オランダ)のメルクス教授の研究グループと共同で、感染症診断のための簡易検査チップを開発した。
 検査チップは紙でできており、大きさは1cm 程度。検査手順は紙チップに血液を一滴垂らしてデジタルカメラで撮影するのみで、20 分ほどで青~緑色の発光により検査結果が判明する。この紙チップは、病院での検査にかかる費用や時間の削減だけでなく、途上国での熱帯症などにおいても簡易検査法として寄与することが期待される。

研究内容
 共同開発されたこの紙チップは、pH試験紙のように使用が簡単。紙チップに血液を滴下して 20 分ほど結果を待つと生物化学反応が起こる。紙チップの底から青~緑色の光が発せられ、その光が青いほど、ターゲットである抗体の量が多いことを示す。光の検出は、携帯電話に付属のカメラなどのデジタルカメラで十分であり、明瞭な結果の判定が可能。
 この紙チップ1枚には、検査に必要な機能及び試薬が集約されている。多層構造になっており、複数のエリアにパターニングまたはさまざまな試薬で前処理されている。青~緑色の発光を阻害する血液中の赤血球の除去機能も、この紙チップには組み込まれています。ユーザーの操作は、血液サンプルの滴下のみで、サンプルと検出試薬が正常に混合され生物化学反応を引き起こし、発光が得られる。紙チップからの発光は、アイントホーフェン工科大学によって開発された、通称「生物発光センサタンパク質」によるものである。このセンサタンパク質は、光を放つ深海生物が持つものと同じタイプの酵素を使用し、青色の発光(生物発光と呼ばれる)が得られる反応を触媒する。サンプル中にターゲットの抗体が存在しなければ、青色の発光が物理的プロセスを経て緑色の発光へと変換される。一方、抗体存在下ではセンサータンパク質に抗体が結合することで、その発光色変換プロセスが遮断され、青色の発光が確認される。つまり、発光が緑色であるほどサンプル中に抗体が少ないことを示し、逆に、発光が青色であるほど抗体が多いことを示す。

 研究成果は、ドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition(アンゲバンテ ヘミーインターナショナル エディション)」に掲載された。
(詳細は、www.keio.ac.jp)