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イメージング質量分析法により昆虫体内の農薬動態を可視化

September, 19, 2018, 大阪--大阪大学大学院工学研究科の新間秀一准教授らの研究グループは、マトリックス支援レーザ脱離イオン化イメージング質量分析法(MALDI-IMS)を用いて、ショウジョウバエ中のネオニコチノイド系農薬の一つであるイミダクロプリド分布を可視化することに世界で初めて成功した。
 これまで行動学的実験からネオニコチノイド系農薬は、蜂群崩壊症候群(CCD)の1つの要因と推測されていたが、昆虫体内における農薬自身の分布情報については報告されていなかった。
 今回、研究グループは、モデル動物としてショウジョウバエを用い、イミダクロプリドを混合した餌を与えた後、ショウジョウバエの凍結切片標本を作製しイミダクロプリドをMALDI-IMSにより直接検出した。イオン化の際、イミダクロプリドはグアニジン化することを証明し、分布情報可視化にはグアニジン化イミダクロプリドのシグナルを用いた。グアニジン化イミダクロプリドのシグナルは、摂食後に腹部周囲で拡散する様子が可視化され、90分後には脳をはじめとする全身で検出されることを示した。この研究成果により、新しい農薬評価手法が確立されるとともに、今後、摂食前後での生体分子変化を観察することで、昆虫生理学研究の新たなツールとなることが期待される。
 研究成果は、日本分析化学会英文誌「Analytical Sciences」に公開されました。
(詳細は、http://www.osaka-u.ac.jp/ja)