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マルチフォトン顕微法で骨転移したガンをイメージング

August, 3, 2018, Calabasas--テキサス州立大学MDアンダーソンガンセンター(The University of Texas MD Anderson Cancer Center)の研究チームは、マウスの骨まで広がるガンの顕微モニタリングとイメージングができるシステムを設計した。これは、人の骨転移の理解向上、処置を開発するためである。
 「進んだ前立腺ガンおよび他のガンは、骨に転移し、治療に耐性がある。また、患者には痛みが生ずる。しかし、前立腺ガンの進行で骨を特別にするものが何であるかはまだはっきりしていない」とScience Translational Medicineに発表された論文の筆頭著者、Eleonora Dondossolaは言う。
 「骨はおそらく、ガン細胞の成長にきっかけと、魅力的な微小環境を提供する」と同氏は見ている。しかし、そのプロセスを詳細に研究するための非侵襲的な顕微鏡は、骨の厚さのために内部空洞と骨髄を見通すことができない。
 「それはブラックボックスであった。ついにわれわれのモデルにより、生体内マルチフォトン顕微鏡で骨の内部に入り、これらの現象をある程度明らかにした」。
 研究チームは、腫瘍細胞と骨および骨常在細胞との相互作用のダイナミクスを時間経過とともにモニタし、捉える方法を示している。

・マウス皮下の培養構造が、約1ヶ月で、骨に入り込む。骨の内部空洞(キャビティ)と外部層は顕微鏡で見透せる。
・骨髄と他の細胞がキャビティに定植すると、ガン細胞株を注入。
・悪性細胞と骨細胞との相互作用を骨の上の皮膚に縫い込まれた小さなガラス窓を通して、マルチフォトン顕微鏡で見る。

 マルチフォトン顕微鏡は、生きた組織を撮像するために使用される蛍光イメージング技術。研究室の顕微鏡は、同時に7パラメータまでを捉えることができる。
 正常な骨生体学は、骨を造る細胞、増骨細胞と、骨を壊す細胞、破骨細胞とのバランスに関与する。ガンは、このバランスを崩し、これら2つ個体数の均衡を変え、症候性骨再形成に至る。
 研究チームの顕微鏡は、腫瘍付近の破骨細胞の周囲で骨密度が少なくなっていることを明らかにした。この現象は、前立腺ガン骨転移の患者には知られており、痛みを伴う。ビオスフォスフォネートという薬剤を使ってこの症状を和らげる。臨床では、その効果は一時的であり、痛みを和らげるが、長く続かないことが知られている。
 チームのマルチフォトン顕微鏡は、この効果を捉えた。ビスフォスフォネート・ゾレドロン酸でマウスを処置し、薬剤が破骨細胞の数を減らさないことを示したが、その活動を遅らせ、骨を維持した。とりわけ、その処置は腫瘍の成長には効果がなかった。このことは、骨が安定しているが、患者の生存は延長されない理由を説明している。
 Friedlの研究室は、このモデルを使ってマウスのガン処置を研究している。これには、免疫療法と放射線療法における並行臨床業務を含む。免疫系を自由にしてガンと闘うための薬剤は、腫瘍微小環境の耐性因子によって阻止されることがある。研究チームは、これを観察し、特徴を明らかにしたいと考えている。
(詳細は、www.mdanderson.org)