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蝶の眼からヒントを得た新しいカメラ、イメージガイドで癌手術を改善

April, 10, 2018, Urbana--蝶の複雑な視覚系を真似ることにより、イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)の研究チームは、従来の色画像と近赤外画像の両方を外科医に提供するカメラを作製した。近赤外で、蛍光ラベルガン細胞が、明るい手術照明下でも可視化できる。新しいカメラは、外科医が健全な組織を損傷することなくすべてのガン細胞を除去するのに役立つ。したがって、ガンが広がったり、何度も手術したりすることがほとんでなくなる。
 イリノイ大学の研究チームリーダー、Viktor Gruevは、「市販のオプティクスやセンサをまとめてイメージガイド手術用カメラを造るよりも、自然の視覚系に注目した。モルフォバタフライは、マルチスペクトル情報を検知できるナノ構造の眼を持っており、近赤外と色情報を同時取得できる」と説明している
 研究チームは、生物からヒントを得たカメラが動物の腫瘍を検出でき、乳ガンのステージ評価に有用であることを実証した。新しいカメラは、標準的な手術室照明下でも非常に高感度に蛍光検出ができ、重量はAAバッテリ以下、20ドル程度で製造できる。
 「手術中にすべてのガン組織を必ず除去しなければならない。われわれは、世界中のどんな病院でも医師にこれができるように支援するイメージングプラットフォームを開発した。それは、小型、コンパクト、安価である。装置側について話したが、われわれの技術が広範なアプリケーションを見つけるには、ガンを標的にし、人に利用できるように認定された蛍光マーカーが必要である。これらのいくつかが現在、臨床試験段階にあるので、この領域での前進が間もなくわかる」とGruevはコメントしている。
 現在の近赤外カメラの多くは、手術設定下で蛍光マーカーを検出する感度が欠如しているので、蛍光を見るには部屋の明かりを暗くしなければならない。
 現在の赤外イメージャのもう1つの問題は、蛍光画像が必ずしも常に、組織と正確に調和して共登録されるわけではないことである。FDA認定機器は、可視波長と赤外波長を分離し、それぞれを別のディテクタに送るためにビームスプリッタやリレイレンズなど多数の光学素子を用いているのでこういうことが起こる。部屋のわずかな温度変化が、これらの機器のオプティクスに影響を与え、画像の不整合が生ずる。このため外科医は、健全な組織を不必要に除去したり、ガン組織を見逃したりする。
 同大学ポスドク研究者、論文の筆頭著者、Missael Garciaは、「今日の赤外イメージャの問題点は、モルフォバタフライと同様のナノ構造を使うことで緩和できる。蝶の複眼は、相互に隣接する光受容体を含んでおり、光受容体のおのおのが、本質的に共記録されるように、光の異なる波長を検知する」と説明している。
 新しいカメラは、各ピクセルが、画像構築に必要な数のフォトンを取得できるようにすることで感度の問題を独自に解決している。
 新しいカメラは、さまざまなナノスケール構造をフォトディテクタアレイと組み合わせることで蝶の眼に似たセットアップを作り、1つのイメージングデバイスで色と近赤外蛍光情報の収集を可能にする。ディテクタとイメージングオプティクスを1つのモノリシックセンサに統合することでデバイスは小型、安価になり、温度変化の影響を受けないようになる。
 設計は、各ピクセルが、画像構築に必要なフォトン数を取り込めるようにすることで、感度の問題を独自に解決する。ラボの可視光は高照度であるので、生体構造を見るための可視波長画像の生成に時間はかからない。一方、蛍光は一般に薄暗いので、十分に明るい画像を構築するのに必要なフォトン数の収集に時間がかかる。露光時間を変えて各ピクセルが必要なフォトンを検出できるようにすることで、組織の色画像を過剰露光することなく、明るい蛍光画像が作れる。
 「明るい手術照明下で、われわれの機器が、現在、赤外イメージガイド手術用に認定されているイメージャよりも蛍光に対して1000倍高感度であることを示した。生物からヒントを得たイメージャは、組織深部の蛍光を明らかにするので、リンパ節特定が速くなり、視力だけでは見えないリンパ節を外科医が発見するのに役立つ」とGruevは話している。
 研究チームによると、生物からヒントを得たイメージャは内視鏡にも組み込んで、たとえば大腸内視鏡でガンを発見することもできる。