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極細内視鏡で脳内深部のニューロン発火をイメージング

March, 30, 2018, Washington--人の髪の毛ほどに細い内視鏡が開発され、生きたマウスの脳内のニューロン活動を撮像することができる。内視鏡は非常に細いので、脳内深くに到達可能であり、研究者は他の顕微鏡や内視鏡では見ることができない領域にアクセスできる。
 MITのJames DiCarlo研究室のポスドク研究者として同デバイスを開発したShay Ohayonは、「動物に使用して脳の働きを理解するだけでなく、この新しい内視鏡はいずれ、人でも一定のアプリケーションで使われる可能性がある。例えば、鼻腔内のイメージングに、より小さく、したがってより心地よい機器になる」と説明している。
 新しい内視鏡は、わずか125µm径の光ファイバをベースにしている。デバイスは市販の最小マイクロ内視鏡よりも5~10倍小サイズであるので、大きな損傷を与えることなく脳組織により深く押し込むことができる。
 Biomedical Optics Expressに発表された論文によると、研究チームはニューロン発火のミクロンスケール解像度画像を捉えることができると報告している。これは、そのように小サイズの内視鏡が生きた動物で実証された最初の例である。
 Ohayonは、「もっと開発が進むと、新しいマイクロ内視鏡を使って、以前にはアクセスできなかった脳の部分、霊長類動物モデルの視覚野などのニューロン活動を撮像できる。また、脳の様々な領域のニューロンがどのように相互作用しているかの研究にも使える」と話している。
 新しいマイクロ内視鏡はマルチモードファイバ(MMF)をベースにしている。これは、同時に多数の異なる光ビームを伝送できる。光がファイバに入ると、それを操作して他端にスポットスポットを生成でき、またファイバを動かすことなく組織の様々な位置にスポットを動かすことができる。サンプル全体に微小スポットでスキャニングすることで、ニューロン活動にラベリングするために使われる蛍光分子を励起することができる。各スポットからの蛍光がファイバを戻ってくると、ニューロン活動の画像が形成される。
 「ニューロン発火を撮像できるだけの高速スキャニングを達成するために、われわれはデジタルミラーデバイス(DMD)として知られている光コンポーネントを使い、光スポットを素早く動かした。開発した技術によりDMDを利用して光を20kHzでスキャンすることができる。これは活動ニューロンからの蛍光を見ることができる速さである」とOhayonは説明している。
 MMFを内視鏡スクランブル光に使用しているので、研究チームは波面整形法を適用してスクランブル光を画像に変換した。波面整形のために研究チームはファイバを通して様々な光パタンを他端のカメラに送り、その特殊ファイバが透過する光をどのように変えるかを正確に記録した。これまでは得られなかった、ファイバが光をどのように変えるかについての情報は、視界全体で小さな点を生成しスキャンするために利用される。

生きたニューロンのイメージング
 培養細胞のイメージングに成功した後、研究チームは麻酔したマウスでそのマイクロ内視鏡をテストした。マウスの頭蓋の微小孔からファイバを挿入し、ゆっくりと脳まで入れた。ニューロン発火を撮像するために研究チームはカルシウムイメージング技術を使用した。これは、ニューロンが発火する時に起こるカルシウムの流入に反応して蛍光を発する。
 「非常に細い内視鏡を使う利点の1つは、それを脳内深くに入れるにしたが、全ての血管を見ることができ、血管にぶつからないようにファイバをナビゲートできることである」とOhayonは言う。
 内視鏡がニューロンの詳細な活動を捉えることを示すだけでなく、研究チームは光の多波長をイメージングに使用できることも実証した。この機能を使って、例えばそれぞれ別の色でラベリングしたニューロンの2グループの相互作用を観察することができる。
 標準的なイメージングでは、内視鏡はファイバの最先端でニューロンを撮像する。しかし、研究チームは、マイクロ内視鏡が先端から100µm程度離れて撮像できることも示した。「これは非常に有用である。ファイバを脳に挿入すると、ファイバ近接のニューロンの活動に影響を与える可能性があるからだ。ファイバからわずかに離れた領域をイメージングすると、健全なニューロンを捉えやすくなる」とOhayonは説明している。

ファイバの曲げへの対処
 マイクロ内視鏡の1つの制約は、ファイバの曲げが画像生成能力を失わせることである。実験では、ファイバはストレートに維持して脳内に挿入したので論文掲載の実験には影響を与えていないが、曲げ問題を解決することで、デバイスのアプリケーションは大幅に拡大する。
 「曲げ問題が解決できれば、遙かに細いプローブを使うことにより、人間での内視鏡利用法が変わる可能性がある。これにより、今日の大きな内視鏡よりもはるかに心地よいイメージングが可能になり、現在は可能でない身体部分のイメージングができるようになるかも知れない」とOhayonは話している。