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KAIST、レーザホログラフィック技術で生物細胞の3D挙動を制御

May, 29, 2017, Seoul--KAIST物理学部研究チームは、光学的操作技術を開発した。これにより複雑な形状の微小サンプルの位置、方向、形状を自由にコントロールすることができる。
 従来の光学的操作技術「光ピンセット」は、微小粒子にマイクロスケールの力を行使し、粒子の3D位置を操作する貴重な道具として利用されてきた。光ピンセットは、ビーム径が1µm以下の強く集束されたレーザを使う。これで隣り合う微小粒子に引力を生み出し、ビーム焦点の方へ移動させる。ビーム焦点の位置をコントロールすることで研究者は粒子を捕まえ、それらを自由に他の位置に動かすことができる。これが「光ピンセット」であり、物理的、生物学的研究にざまな分野で広く用いられてきた。
 これまで、光ピンセットを使うほとんどの実験は球形粒子捕捉するために利用された。自然原理で、光学的力、微小粒子の応答動作が容易に予測できるからである。複雑な形状の対象を捕捉するには、従来の光ピンセットはそのような粒子の不安定な動きを誘導することになり、そうした対象の制御可能な方向には制約があり、これが生体細胞のような複雑な形状の微小対象の3D動作制御の妨げになっている。
 研究チームは、任意の形状の複雑な対象を捕捉できる、新たな光学的操作技術を開発した。この技術は、3Dホログラフィック顕微鏡を使って最初に対象の3D構造をリアルタイムで計測する。これはX線CTイメージングと同じ物理原理を共有している。計測された対象の3D形状に基づいて、研究者は対象を安定的に制御できる正確な光の形状を計算する。光の形状が対象の形状と同じなら、対象のエネルギーは最小化され、これによって複雑な形状の対象を安定的に捕捉することができる。
 さらに、光形状を制御して対象の様々な位置、方向、形状をとらせることにより、対象の3D動作を自由に制御し、対象を所望の形状にすることができる。このプロセスは、所望の形状を持つ像を鋳型で造ることに似ているので、研究チームは“tomographic mold for optical trapping (TOMOTRAP)「断層成形光学捕捉」と呼んでいる。研究チームは、人の赤血球細胞を個別安定捕捉し、それらを所望の方向に回転させ、L字に折りたたみ、2つの赤血球細胞から新しい構造を造ることに成功した。加えて、複雑な形状の結腸ガン細胞を安定的に捕捉し、所望の方向に回転することができた。これらの全てが、従来の光学技術では実現困難である。