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光磁場センサで神経系の信号を検出可能

July, 29, 2016, New York--人の身体は電気刺激によってコントロールされている、例えば脳、心臓、神経系。これらの電気信号が微小な磁場を作り、医師はそれを使って様々な病気を診断する、例えば胎児の脳あるいは心臓の病気。
 ニールスボア研究所の研究チームは、そのような極めて小さな磁場を光磁気センサで高精度に計測する方法の開発に成功した。
 人体からの小さな磁場は通常、非常に高感度の超伝導磁場センサでしかとらえることができない。このようなセンサは、液体ヘリウムで絶対零度付近まで冷却する必要がある。しかし今回、コペンハーゲン大学ニールスボア研究所の研究チームは、室温でも体温でも動作する非常に安価な、極めて実用的な光磁場センサを開発した。
 「光磁場センサは、小さなガラス容器に入れたセシウム原子のガスをベースにしている。個々のセシウム原子は、小さな棒磁石に匹敵し、外部磁場の影響を受ける。原子、したがって磁場はレーザ光を使うことで取り出せる。この方法は、量子光学と原子物理学に基づいており、極めて小さな磁場の計測に使うことができる」とニールスボア研究所量子光学センタ准教授、Kasper Jensenは説明している。
 磁場センサはガラス容器で構成されている。これには、約長さ1㎝、幅1㎜のチャネルがある。ガラス容器の底にセシウム金属がある。セシウムは、室温で気化し、ガス原子はセンサの小さなチャネルに上がってくる。個々のセシウム原子は自転しており、その軸が微小な棒磁石に匹敵する。センサを、電気的神経パルスを放出する神経に近づける。電気パルスは磁場を持つので、セシウム原子の軸の傾きを変える。レーザビームをガスに通すと、神経信号の微小磁場を読み取ることができる。
 実験では、神経系からの電気パルスの磁場検出にその磁場センサが使えることが示された。実験はカエルの坐骨神経で行われた。これは、多くの点で人体の神経と類似している。実用的な理由から、テスト前に神経はカエルから取り出したが、生きたカエルあるいは人間からの電気信号を捉えることも可能である。

接触なしで計測
光学センサの利点は、磁場と電気刺激が数ミリもしくは数センチ離れて安全かつ容易に捕らえることができることである。センサを実際に体に接触させる必要はない。
 例えば、母親のおなかに磁場センサを置いて、胎児の鼓動を容易に、安全に調べることができる。
 Eugene Polzikの説明によると、計測した信号から動いている神経パルスのスピードを計算することができる。神経が損傷を受けている病気はたくさんあり、例えば多発性硬化症では神経パルスは正常な人よりも非常にゆっくり動く。他の例では、目に電極を当てることなく診断できる、アルツハイマでは特殊な神経経路の電気信号を計測することができる。
(詳細は、www.nbi.ku.dk)