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大脳皮質ニューロンの過去最大のネットワーク

May, 12, 2016, Seattle--脳の神経ネットワークは最も単純なものでも数100万の接続で構成されており、脳の働きを理解するには、この膨大なネットワークを調べることが不可欠である。
 シアトルのアレン脳科学研究所、ハーバード大学医学大学院、ニューロ-エレクトロニクス・リサーチフランドル(NERF)の国際研究チームは、視覚皮質ニューロン間接続でこれまでの最大ネットワークを発表した。
 この研究により、脳のネットワークがどのように組織されるかについていくつかの重要な要素が明らかになった。論文は、Natureに発表されている。
 論文の筆頭著者、Wei-Chung Allen Leeによると、回路配線、ニューロンネットワーク、ネットワークコンピュテーション間の関係を発見することで脳のリバース・エンジニアリングを始めるための道具が手に入った段階だと言う。
 「何十年も研究者たちは脳の活動と配線を独立に研究してきて、その2つを結び付けることができなかった。われわれの成果は、その2つの世界をこれまでになく詳細につなぎ、相互に作り出すニューロンの電気的活性とナノスケールのシナプス結合をリンクするものである」とNERFの主席研究者Vincent Boninはコメントしている。
 研究チームは、マウスの視覚皮質のニューロンを特定することでこの研究を始めた。視覚皮質は、スクリーンの垂直あるいは水平バーのように、特殊視覚刺激に反応する。次にLeeは、脳を超薄切りにし、何百万ものターゲット細胞とシナプスの詳細な画像を得た。これらは、次に3Dで再構築された。
 この大量のデータが生み出すいくつかの結果を分析れすると、同じ作業をするニューロンが、違う仕事をするニューロンよりも相互に接続されがちであるという考えをサポートする構造的な証拠が含まれていることがわかる。さらに、ニューロンは全く違う機能を実行する多くの他のニューロンと絡み合っているとはいえ、そのような接続はさらに大きい。
 「われわれは皮膚神経回路におけるモジュラーアーキテクチャの初の解剖学的証拠の一部を確認した。また、ニューロン間の機能的特殊接続の構造基盤も分かった。われわれがとったアプローチにより、神経回路の組織原理を定義できるようになった。われわれは、皮膚神経回路モチーフを発見できる態勢にある。それは大脳ネットワーク機能の基本的構成要素として機能している可能性がある」(Lee)。
 アレン研究所シニア研究者R. Clay Reidによると、この研究の独自性の一部は機能的イメージングと詳細な顕微鏡の組み合わせである。「顕微データは前例のないスケールであり、詳細である。また、特定のニューロンがどのような機能を果たすかを初めて知り、それが同じことを、あるいは違うことを行うニューロンとどのように接続しているか見ることで、非常に強力な知見が得られている」と同氏は話している。