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角膜疾患の高精度治療に新方法を開発

May, 9, 2016, Boston--マサチューセッツ総合病院光療法ウエルマンセンターの研究チームは、角膜の組織を選択的に硬化させる光ベースの新技術を開発した。いずれ弱くなった角膜組織が原因の眼疾患の治療が改善されると見られている。
 Opticaに発表された論文によると、研究チームは、角膜組織を作っているコラーゲン繊維を精密に架橋することで角膜を強化する新しい技術を開発した。また、処置がされていない領域に影響を与えることなく、組織の硬さを計測する特殊な顕微鏡アプローチも実証している。
 病気により、眼の前部をカバーする透明なドーム型層、角膜が徐々に弱くなり、ついに目の圧力でそれが膨らんで視覚障害につながる。円錐角膜として知られる病状が進行すると、最終的には角膜移植が必要になるかもしれない。しかし、角膜架橋という新しい治療が円錐角膜の進行を遅らせ、あるいは止めるために有望視されている。そのような処置は、ヨーロッパ、カナダ、日本で行われており、米国では臨床試験が行われている。
 マサチューセッツ総合病院光療法ウエルマンセンター(Massachusetts General Hospital Wellman Center for Photomedicine)、研究チームリーダー、Seok-Hyun Yunによると、角膜全体の架橋には現在UV光が使用されている。「しかし、この方法は角膜の最内層を損傷するリスク、角膜機能が変化しカスミがかってくると言う合併症の危険性がある。また、その処置が実際に患者の視力を改善するかどうかも予測できない」と同氏はコメントしている。
 こうしたことから、研究チームは、二光子吸収を使って角膜架橋を正確にコントロールできるかどうかの検討を考えていた。二光子吸収は、近赤外(NIR)フェムト秒レーザを使って限られた範囲で非常に高い空間分解能を達成できる。このアプローチは、液状樹脂を固めて微小光学部品や他の3D構造作製に使われている。この研究以前には、その技術は、最初は固かった組織を所定範囲で固くするために適用されたことはなかった。
 二光子吸収が実際に架橋を誘発するかどうかを見るために、研究チームは自作の二光子顕微鏡セットアップを使用した。ここでは、対物レンズを通してフェムト秒Ti:Sapphireレーザ光を照射する。対物レンズの下に置いた角膜サンプルの組織に感光性染料を施し、特定層にレーザ光を当てる。
 試行錯誤の結果、組織に200mWレーザを10分照射すると、組織に損傷を生ずることなくコラーゲン架橋を誘発することが分かった。組織のある領域にレーザを走査することで特異的3D領域に架橋を誘発できることが確認された。
 課題の1つは、誘発された架橋の確認である。二光子吸収によって誘発されたコラーゲン架橋は、標準的なイメージング法では簡単に可視化されない。研究チームは、ブリルアン顕微鏡という、Yunの研究室が以前に開発し、徐々に改善された特殊技術を用いた。ブリルアン顕微鏡は、非接触で3Dバイオメカニカル組織特性を高い空間分解能で計測する。
 二光子吸収アプローチは、架橋を1つ1つ誘発するので、時間はかかるが、小さな領域、あるいは組織の薄いスライスの架橋には極めて有用である。
 様々な架橋パタンが角膜形状や視覚にどのように影響するかを理解するにはさらなる研究が必要であるが、この新しい技術により、治療効果を最大化するために患者の角膜の膨らみに3Dパタンで架橋が可能であると研究チームは考えている。
(詳細は、Optica, 3, 5, 469 (2016).
DOI: 10.1364/optica.3.000469)