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「生体の窓」を使った明るい観察が可能なシリコン蛍光体を開発

April, 27, 2016, 名古屋--物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点のフランソワーズ・ウィニックMANA主任研究者らの研究グループは、「生体の窓」と呼ばれる、光が生体を透過しやすい近赤外の波長域 (650 – 1000nm) において、従来より毒性が格段に低く発光効率の良いシリコン蛍光体を使ったバイオイメージングに世界で初めて成功した。
 これは、白幡直人MANA独立研究者らの研究グループ、名古屋大学大学院工学研究科の馬場嘉信教授と安井隆雄助教の研究グループとの共同研究。
 蛍光バイオイメージングとは、肉眼では見ることのできない細胞などを蛍光体で標識して可視化することで、細胞の分布状態や動態を生きたままリアルタイムに観察する手法。この技術を応用することで、病気の発現に関わる細胞や生体分子の動態を観察して、その発現メカニズムの解明につながることなどが期待されている。従来の蛍光体は、その多くが紫外光や可視光に反応して発光するが、紫外 – 可視光はヘモグロビンや水など生体組織に吸収されてしまい生体深部が観察できない。また、「生体の窓」の光に反応する蛍光体もあるが、それらの大半は発光効率が悪く、発光効率の良いものは鉛や水銀など毒性のある元素で構成されているといった問題があった。
 研究グループは、シリコンを主成分とする粒子を用いて、「生体の窓」の波長域に対して効率よく発光する蛍光体の開発に成功した。シリコンはこれまでにもバイオイメージング用の蛍光体として利用が検討されてきたが、効率良い発光を得るには紫外光で励起する必要があり、また発光効率も低いといった問題に悩まされてきた。研究では、コアである結晶シリコンのナノ粒子を炭化水素基と界面活性剤で覆う、新しいコア・ダブルシェル構造を考案。二光子励起法を利用すると結晶シリコンを近赤外光で効率良く光励起することができ、炭化水素基は発光量子収率を高める効果がある。さらに界面活性剤で覆うことで水溶性を付与した。その結果、標的とする生体分子を効率よく標識できるようになり、生体透過性の高い波長域での蛍光バイオイメージングの実現につながった。
 今後、研究グループは、今回開発したシリコン蛍光体を利用し、生体深部の蛍光イメージングを目指す。
(詳細は、www.nims.go.jp)