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光遺伝学でアルツハイマーマウスモデルの失われた記憶を回復

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April, 6, 2016, Cambridge--アルツハイマー病は物忘れなどの記憶障害から始まり、徐々に認知機能全般が低下していく病気。アルツハイマー病では、記憶の形成、保存、想起に重要な役割を果たす「海馬」やその周辺で神経細胞の変性が起こる。そのため、アルツハイマー病初期の記憶障害は、海馬が正常に働かなくなることによると考えられている。しかしその原因が“新しい記憶を形成できないため”なのか、それとも“一旦形成された記憶を思い出せないため”なのか、そのメカニズムは不明だった。
 理化学研究所の研究チームは、光遺伝学を用いた別の研究で、個々の記憶は海馬の「記憶エングラム」と呼ばれる細胞群に保存されることを証明している。今回は、ヒトのアルツハイマー病患者と同様の神経変性を起こす「アルツハイマー病モデルマウス」では、記憶エングラムがどうなっているのか、直接調べた。
 普通のマウスを実験箱に入れて、弱い電流を脚に流して嫌な体験をさせる。翌日、マウスを同じ実験箱に入れると、昨日の嫌な記憶を思い出して“すくむ”。アルツハイマー病モデルマウスで同じ実験をすると、嫌な体験をした翌日に同じ実験箱に入れてもすくまなかった。つまり、記憶障害を示しているといえる。研究チームは、アルツハイマー病モデルマウスが嫌な体験をしているとき、記憶エングラム細胞を特殊な遺伝学的手法で標識した。翌日別の実験箱内で、青色光の照射によって記憶エングラム細胞を直接活性化すると、マウスはすくんだ。この結果は、アルツハイマー病モデルマウスは記憶を正常に形成し、保存しているが、想起できなくなっている可能性を示している。さらに研究チームは、アルツハイマー病モデルマウスでは、神経細胞同士をつなぐシナプスが形成されるスパインという構造の減少と記憶想起の障害に関連があることを突き止めた。光遺伝学を用いて、このスパインを正常化すると記憶想起も正常になることが分かった。
「アルツハイマー病初期の患者の記憶は失われているのではなく、思い出すことができないだけかもしれません」と利根川進博士は語っている。

研究チーム
理化学研究所 脳科学総合研究センター 理研-MIT神経回路遺伝学研究センターセンター長 利根川進(マサチューセッツ工科大学 教授)
博士課程 Dheeraj Roy(MIT 博士課程)