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モバイル遺伝子検査機の開発に成功

February, 9, 2017, つくば--JST 先端計測分析技術・機器開発プログラムの一環として、日本板硝子、産業技術総合研究所(産総研)、およびゴーフォトン(GoFoton)の共同開発チームは、「モバイル遺伝子検査機」(小型・軽量リアルタイムPCR装置)の開発に成功した。
 従来の細菌やウイルスなどの遺伝子検査は高精度で有用な一方、装置は大きく高価で検査にかかる時間も長いため、専門施設でしか利用できなかった。感染の拡大を抑えるには早急に有効な対策が必要であるが、そのためには現場で原因となる細菌やウイルスなどを迅速に特定できる遺伝子検査機が求められていた。
 開発チームは、小さなプラスチック基板で目的の細菌やウイルスの遺伝子を高速に増やす産総研の技術と、その遺伝子の量を高感度で測定できる日本板硝子独自の小型蛍光検出技術を組み合わせることで、高精度のまま小型化と検査時間の短縮を実現した。
 開発したモバイル遺伝子検査機は、従来の装置に比べ片手で持ち運べるほど小型・軽量(約200mm×100mm×50mm、重量約500g)で、従来は約1時間かかっていた検査時間を、約10分に短縮した。また、小型化により低コスト化を実現し、バッテリー駆動も可能。
 この成果によって、これまで専門施設内に限られていた高精度の遺伝子検査が場所を問わず実施可能となる。インフルエンザやノロなどのウイルスや細菌を現場で素早く特定できるため、医療現場だけでなく工場などの食品衛生、環境汚染調査のほか空港や港湾で感染症予防の水際対策での使用など、幅広い分野での活用が期待される。このモバイル遺伝子検査機は、日本板硝子より年内発売を目標に開発を進めている。

特長は以下の通り。
・小型:手のひらサイズ(約200mm×100mm×50mm)
・軽量:約500g
・高速:約10分(産総研開発の大腸菌用高速PCR試薬を用いた時の例)
・感度:20copies/μL以下(同上)
・測定項目数:最大3項目
・その他:逆転写可能(ウイルスなどのRNA量も測定可能)
バッテリー駆動可能、振動に強い、最高使用高度2000m、簡単操作

 さらに、産総研で高速に反応するPCR試薬を作製し、これを用いて試作機でPCR増幅テストを実施した。性能は以下の通りで、モバイル・高速でも従来のPCR装置とほぼ等しいことが確認できた。
・大腸菌用試薬を用い、約10分で20copies/μL(感度は大型装置と同等)を検出
・ノロウイルス用試薬を用い、約12分で20copies/μL(同上)を検出
・インフルエンザ用試薬を用い、約12分で50pfu/mL(同上)を検出
(詳細は、www.aist.go.jp)