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最先端イメージングセミナー、Imaging Japan 2020で開催
イメージング技術による課題解決に注目集まる

February, 18, 2020, 東京--1月30日(木)、東京ビッグサイト(東京都江東区)において「最先端イメージングセミナー」が開催された。本セミナーは1月29日(水)から3日間、同展示会場で開かれた「All about Photonics 2020」(InterOpto、LED JAPAN、Imaging Japanで構成)の中の「Imaging Japan 2020」併催セミナーとして開催されたもの。
 セミナーでは、東京大学・情報理工学系研究科の石川正俊氏による「高速知能システムの実現に向けて実用化が始まった高速画像処理技術」と、ソニーセミコンダクタソリューションズ・イメージングシステム事業部の鷹本勝氏による「産業のスマート化を加速するイメージング&センシング・デバイス・ソリューションの最新技術動向と今後の方向性」の2本の講演が行われ、各方面より注目を集める高速画像処理技術とイメージング/センシング・デバイスの最新動向が披露された。

最先端イメージング技術とその将来
 東京大学の石川正俊氏(写真)は「高速知能システムの実現に向けて実用化が始まった高速画像処理技術」の中で、高速画像処理の基本的な考え方や開発したデバイス・システムの基本構造を説明するとともに、様々な応用システムの実例を紹介、さらに今後の展望や応用の可能性についても解説した。
 高速画像処理技術の研究開発に注目が集まる中、石川氏は1,000fpsという高速画像処理の実用化に成功。これにより人間の目をはるかに超える速度での認識・フィードバックが可能となり、ロボットやFA・検査、自動運転、バイオ・医療、セキュリティ、データアーカイブなどの分野で、これまでは難しいとされてきた高速化への道を拓くとともに、従来の画像応用知能システムで課題とされていた高速性と完全性の問題の具体的な解決に成功した。
 講演では、高感度CMOSイメージセンサと高速並列処理を組み合わせた汎用積層型ビジョンチップの設計概念と特長(高速並列処理:140GOPS、消費電力:0.363W等)をGPUとの比較を交えながら解説、さらにこれをベースとした開発プラットフォーム、ビジョンチップカメラが紹介された。
 石川氏は、高速化はアルゴリズムを簡素化すると述べ、アクチュエータと組み合わせたアクティブビジョンの応用事例として、野球ロボットや卓球ロボットを始め、高速飛翔体の衝撃波画像計測(393.6m/sの飛翔体の衝撃波観測)、高速・低遅延ジェスチャーUI(遅延時間30ms)、高速プロジェクションマッピング(遅延時間3msの映像投影)、高速道路のトンネル壁面高速検査(100km/hの走行速度で0.2mmの壁面を識別)、高速ブックスキャン(250ページ/minのスキャン速度)、不安定な前傾走行姿勢で走ることのできる高速二足ロボットなどを解説、その他にも自動運転やITS、監視カメラ、顔認証などへの応用についても紹介した。
 石川氏は、世界シェアが高い日本の高機能センサ技術(日本のCMOSイメージセンサは、世界で50%のシェアを維持)やアクチュエータ技術を融合させ、得意な分野でのシステム構築技術を確立することで、日本の強みを前面に打ち出し、日本から世界をリードしたいと述べた。

 続いて登壇したのは、ソニーセミコンダクタソリューションズの鷹本勝氏。「産業のスマート化を加速するイメージング&センシング・デバイス・ソリューションの最新技術動向と今後の方向性」について講演を行った。
 スマート産業の実現や持続可能な開発目標(SDGs)の達成には様々な課題が横たわっており、その解決のため、多種多様なデバイスやソリューションの活用が期待を集めている。講演では、その実現のために、同社が開発・検討を進めている新規デバイスとソリューションが紹介された。
 鷹本氏は、産業界で必要とされている検査の高度化や生産効率の改善、さらには労働力不足への対応など、自働化が急務とされる状況の中、これまでの常識を超えるイメージセンサによって、これらの課題解決への可能性を提示するとともに、今度の方向性についても紹介した。
 講演では、歪みのない高い撮像性能と小型化の両立を実現する同社独自の裏面照射型画素構造のグローバルシャッター機能を搭載した積層型CMOSイメージセンサ技術「Pregius S」が紹介されるとともに、鷹本氏はこれまでの人間の目による「映像で見る」という局面から、AIによる「データで見る」という局面へ移行する、イメージセンサ開発以来、最大のパラダイムシフトが起こっていると指摘した。
 そして、積層イメージセンサはその積層技術によってイメージング性能の進化だけでなく、エッジAIの利点(センサ内での検知・判断、ダイナミック制御による効率化、価値のデータ化)をさらに強化することが可能で、このエッジAIによるインテリジェント化の進展によって、必要な時だけ、必要な領域だけ画像を捕らえて、1/100という低消費電力化を実現するとともに、処理の分散化と全体の最適化が可能になり、産業分野における大幅な合理化が達成できると述べた。
(川尻 多加志)