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Technology Focus: 様々な高速COVID-19感染テスト

June, 2, 2021--世の中は、COVID-19感染拡大で大騒ぎしているが、例年1000万人以上も出ていたインフルエンザ患者が激減し、他の肺疾患で死亡する人も減少していることから、良識あるニュースは、これまで減少傾向にあった日本の人口が下げ止まる、あるいはわずかに増加するとレポートしている。
詳しくは、厚生労働省の人口動態統計[A1]を見れば分かることなので、ここでは立ち入らない。

今回は、迅速COVID-19テストに関する研究から、以下の3つの研究成果を紹介する。

1. Caltech、COVID-19感染状況を迅速検出するセンサ
2. 携帯で録音した咳からCOVID-19感染をAIモデルが検出
3. 新しい呼気イメージング法、COVID-19伝染を洞察

1. Caltech、COVID-19感染状況を迅速検出するセンサ
阻止が非常に難しいCOVID-19ウイルスの特徴は、まだ感染の症状が出ていない人が簡単に他人にウイルスを移すことである。ウイルスのキャリアは、全く大丈夫だと感じて日常的に仕事にでかけるかも知れない。仕事に、家族の家に、あるいは集会にウイルスを運んでいく。
パンデミックの拡大を阻止する世界的な取り組みの重要な部分は、まだ症状が出ない人々の感染を迅速に特定できるテストの開発である。
今回、Caltechの研究者は、新タイプのマルチテスト(多数の種類のデータを統合するテスト)を開発した。これは、ローコストセンサであり、医療の専門家に関わることなく、小量の唾液、血液の素早い分析により10分以下でCOVID-19感染を家庭で診断できる。
研究は、。[A2]医用工学部Andrew and Peggy Cherngの准教授、Wei Gaoの研究室で行われた。以前、Gaoのチームは、痛風、ストレスレベルなどの症状をモニタできるワイヤレスセンサを開発した。これは非常に低レベルの血液、唾液、汗の特定の化合物を検出することでモニタする。
Gaoのセンサは、薄いカーボンシート、グラフェンでできている。レーザでエッチングしたプラスチックシートが,微小な孔の空いた3Dグラフェン構造を作り出す。その孔が、センサの大きな表面を覆っていて、微量にしか存在しない化合物を高精度に検出する感度となっている。このセンサではグラフェン構造が抗体、特定のタンパク質に感度がある免疫系分子と結合する。例えば、COVID-19ウイルスの表面のタンパク質である。
そのセンサの以前のバージョンは、ホルモンコルチゾールのための抗体で満たされていた。これは、ストレスに関連している。まだ、高濃度で痛風を起こす尿酸に対する抗体で満たされていた。そのセンサの新バージョンは、GaoがSARS-CoV-2 RapidPlexと名付けたもので、抗体と、ウイルスそのものを検出できるタンパク質を含んでいる。抗体は、ウイルスと闘うために身体で作られる。また炎症の化学マーカーは、COVID-19感染の重症度を示す。
Gaoは、「これは、これまで見た唯一の遠隔医療プラットフォームであり、1個のセンサにより3種のデータで感染情報を提供する。数分で、われわれはこれらのレベルを同時にチェックできるので、感染の全貌を見ることができる。早期感染、免疫、重症度が含まれる」と説明している。
確立されたCOVID-19テスト技術は、通常、結果が出るまでに数時間、数日かかることがある。そのような技術は高価で複雑な装置を必要とするが、Gaoのシステムはシンプルでコンパクトである。
これまで、そのデバイスは、小数の血液と唾液サンプルで研究室だけでテストされた。サンプルは、医療研究目的で、COVID-19陽性、陰性とテストされた個人から得たものである。センサは非常に正確であることを暫定的結果は示しているが、、その正確さを決定的に確定するには、研究室サンプルではなく、実世界の患者で大規模テストが実施されなければならない、とGaoは警告している。
現在、パイロット研究は完了しており、Gaoの次の計画は、そのセンサが通常使用でどの程度長く持ちこたえられるかをテストし、COVID-19入院患者でそれのテストを始めることである。病院でのテストを受けて、家庭利用のテストの最適性をテストする考えである。テストに続いて、そのデバイスが、家庭で広範に利用されるには,規制認可を受ける必要がある。
「われわれの究極目標は、家庭利用である。次の年には、ハイリスク個人に家庭利用向けにそれらを郵送する計画である。将来的には、このプラットホームは、家庭でテストする他の種類の感染用に改良可能である」と同氏は話している。

図 補助のエレクトロニクスを取り付けると、センサはBluetoothでデータをユーザの携帯電話にワイヤレス送信できる。
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2. 携帯で録音した咳からCOVID-19感染をAIモデルが検出
COVID-19に感染している無症状の人は、当然、識別可能な病気の身体的兆候を示さない。したがって、そういう人々は、ウイルステストをする見込はなく、無意識のうちに感染を他人に広げることがあり得る。
しかし,無症状の人々は,ウイルスによって引き起こされた変化を完全に免れないかもしれない。MITの研究チームは、無症状の人々は、咳の仕方が健康な人々と違う可能性を見いだした。この違いは人の耳では識別できない。しかし、人工知能(AI)で取り出すことが可能であることが分かった。
研究成果は、IEEE Journal of Engineering in Medicine and Biologyに発表された。チームは、強制咳の記録により無症状な人々と健康な人を区別するAIを報告している。咳は、ウエブブラウザ携帯電話やラップトップなどのデバイスで任意提供されたものである。
研究チームは、、そのモデルを数万の発話と咳サンプルでトレーニングした。チームがそのモデルに新しい咳記録を与えると、それはCOVID-19に罹っていると確認される人々からの咳を98.5%の正確さで特定した。これには無症状者からの咳が100%含まれている。無症状者は、症状がないと報告したが、ウイルステストで陽性であることがわかっていた。
チームは、そのモデルを使いやすいアプリに組みこもうとしている。FDAが認可し、大規模に採用されると無症状COVID-19と思われる人々を特定する、無料で便利な非侵襲的なツールになる可能性がある。ユーザは日々ログインし、電話に向かって咳をすると、感染しているかどうかについての情報が直ちに得られ、正式なテストで確認することになる。
「このグループ診断ツールの効果的な実装はパンデミックの広がりを縮小する。みんなが教室、工場あるいはレストランに入る前にそれを使えばの話だ」と論文の共著者、Brian Subiranaはコメントしている。同氏は、MIT Auto-ID研究所の研究者。

声に顕れる感情
パンデミックが始まる前にすでに研究グループは、肺炎や喘息などの症状を正確に診断するために咳の携帯電話記録でアルゴリズムをトレーニングしていた。同様にしてMITチームは、アルツハイマ病の兆候を検出できるかどうかを見るために強制咳記録を分析するAIモデルを開発していた。アルツハイマ病は、記憶減退だけでなく、弱った声帯など、神経筋の劣化に関わる病気である。
まず、ResNet50として知られる一般的なマシンラーニングアルゴリズム、ニューラルネットワークをトレーニングした。声帯の強さの様々な度合いに関連する音を区別するためである。研究により分かったことは、“mmmm”という音の品質が、人の声帯がどの程度弱いか、強いかを示しているということである。Subiranaは、1000時間を超える会話でオーディオブック・データセットを利用してニューラルネットワークをトレーニングし、“the” や “then.”などの他のワードから“them”を抽出した。
チームは、会話で明らかになる感情状態を区別するために第2のニューラルネットワークを訓練した。アルツハイマ病患者および神経的衰退がより一般的に見られる人々は、幸福感あるいは落ち着きを示す人々と比べて、頻繁にフラストレーションなど、ある感情を表すからである。あるいは感情鈍麻[A3]を示す。研究チームは、役者が感情状態、中立、落ち着き、幸福や悲しみなどを抑揚をつける大規模データセットに基づいてモデルを訓練することで、感情的会話分類器モデルを開発した。
研究チームは次に、咳のデータベースで第3のニューラルネットワークをトレーニングした。目的は、肺や呼吸器系のパフォーマンスにおける変化を識別するためである。
最後にチームは、3つのモデル全てを統合し、筋肉劣化を検出するアルゴリズムを重ねた。そのアルゴリズムは、基本的にオーディオマスク、つまりノイズレイヤをシミュレートし、弱い咳に対して強い咳を区別する、すなわちノイズがあっても聞き取れる咳を区別することで機能する。
その新しいAIフレームワークを、チームは、アルツハイマ病患者を含め、オーディオ記録に与え、それがアルツハイマ病のサンプルを既存モデルよりもよく同定できることを確認した。その結果は、声帯の強さ、感情、肺と呼吸器系のパフォーマンスが、その病気の診断に効果的なバイオマーカーとなることも示した。
コロナウイルスパンデミックが広がり始めたとき、Subiranaは、アルツハイマ病向けの彼らのAIフレームワークがCOVID-19の診断にも有効ではないかと考えた。感染した患者が、一時的な神経筋肉障害など、同じような神経学的な症状を経験したという証拠が増えたからである。
「話したり咳をしたりする音は、両方とも声帯と周囲の器官によって影響を受ける。つまり、喋るとき、その会話の一部が咳き込んでいるようになる、あるいはその逆。われわれが簡単に流暢な会話から拾えることは、AIは咳から簡単に拾える。その人物の性別、母国語、あるいば感情の状態などが含まれる。実際、咳の仕方には感情が埋め込まれている。だから、これらアルツハイマ病用のバイオマーカーをCOVID-19で試してみては、と考えたのである(関係があるかどうかを見るためである)」と同氏は説明している。

驚くべき類似性
4月、チームは、可能な限り多くの咳記録をCOVID-19を含む患者から収集し始めた。ウエブサイトを設置し、人々が携帯電話、他のウエブ対応機器から一連の咳を記録できるようにした。参加者は、経験している症状の調査も記入。COVID-19かどうか、症状が医者の判断により公式テストで診断されたか,自己診断かどうか。性別、地域、母国語も記入できる。
今日まで研究チームは、70000を超える記録を収集した。それぞれが複数の咳を含んでおり,強制咳サンプルは20万程度となり、Subiranaによると、これは「最大の研究咳データセット」である。無症状を含め、COVID-19が確認された人々から2500程度の記録が提出された。
チームは、その2500 [A4]COVID-19関連記録と、データセットのバランスをとるために収集された中からランダムに選択し、さらに2500程度を加えて利用した。チームは、これらのサンプルの4000を利用して、AIモデルをトレーニングした。残りの1000記録をそのモデルに与えて、それがCOVID-19患者を健康な人から正確に区別できるかどうかを調べた。
研究者によると、この研究は、「アルツハイマ病とCOVID識別の間の驚くべき類似性」を明らかにした。
元々はアルツハイマ病用だったAIフレームワークに大きな調整を行うことなく、チームは、それが4つのバイオマーカー、声帯の強さ、感情、肺と呼吸器家[A5]のパフォーマンス、筋力劣化におけるパタンを抽出できることを確認した。これらのバイオマーカーは、COVID-19特有である。モデルは、COVID-19と確認された人々からの咳を98.5%特定し、無症状の咳のすべてを正確に検出した。
「これは、音を発する仕方、たとえ無症状であっても、COVID-19に罹っている時の変化を示すと考えられる」(Subirana)。

無症状的症状
Subiranaの強調するところによると、たとえその症状がCOVID-19であろうと、インフルエンザあるいは喘息など他の症状であっても、そのAIモデルは、症状のある人々を診断するためのものではない。ツールの力量は、健康な咳から無症状の咳を区別する能力にある。
研究チームは、このAIモデルをベースにした無料の事前スクリーニングアプリを開発する企業と協働している。また、世界中でいくつかの病院と提携し、より大規模で多様な咳記録を収集する。これは、モデルの正確さを訓練し、強化するために有用である。
最終的に、チームが開発したようなオーディオAIモデルは、スマートスピーカーや他のリスニングデバイスに組み込まれ、恐らく日々、人々が病気のリスクの最初の判断を便利にするために役立つ[A6]。

図 MITの研究者は、COVID-19の症状がない人々が、咳の仕方で健康な人々から区別できることを見いだした。これらの差は、人間の耳では解読でき名[A7]。しかし、人工知能(AI)により拾い出すことができることが分かった。
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3. 新しい呼気イメージング法、COVID-19伝染を洞察
Rollins Collegeの研究チームによると、誰かが話したり歌ったりしている時の呼気を可視化する新しい方法は、COVID-19などの病気の拡散、フェイスマスクの効果の程度を見通せる。
Rollins Collegeの研究者、Thomas Mooreは、「SARS-CoV-2は、主に呼吸飛沫で広がると研究者は考えている。飛沫は呼気で運ばれ、咳やクシャミで放出される。しかし、それは空中エアロゾルによっても運ばれる(空気感染)。これらは小さな飛沫であり、大きな飛沫よりも長く空気中にとどまる。開発したシステムは、呼気がどの程度広がり、周囲の空気に分散されるかを推定する。また、呼気が空気中を広がる距離をマスクで大きく制限する視覚的証拠を示すことができる」とコメントしている。
Applied Opticsに発表された論文でMooreは、呼気と周囲の空気との温度差をイメージングするために電子スペクルパタン干渉法の使用法を説明している。その新技術は、会話や歌唱の間に口から呼気の広がり方の詳細を調べるためにも利用できる。これは、音楽指導やスピーチセラピーにも役立つ。

楽器から人々へ
Mooreは当初、パイプオルガンなどの楽器を通した空気の流れを研究するためにイメージング技術を開発した。「COVID-19パンデミックに応えて、人々の会話や歌唱の呼気のイメージングを始めた。既存システムの機能を高めることで、呼気がどの程度広がり、マスクが呼気の広がりの制約にどの程度効果的であるかを判断できることが分かった」と同氏は説明している。
呼気のイメージング[A8]使用されるほとんどの既存アプローチは、高価な装置を必要としており、比較的小さなエリアしか撮像できない。Mooreは、この制約を克服するために市販で入手可能な光コンポーネントを利用するシステムを設計した。
「わたしは、電子スペクルパタン干渉計の変形を利用した。これは、固体の振動パタンの研究に長年利用されてきたものである。イノベーションは、それが透明物、固体の振動の代わりに、例えば呼気をイメージングに利用できるようにシステムを変更したことである」。
そのイメージングシステムは、光のスピードが、透過する空気の温度に依存して変化することを利用する。呼気は、周囲の空気よりも温かいので、呼気を透過する光は、透過しない光よりもわずかに遅くカメラに到達する。光の速さのこのわずかな差を利用して、呼気の画像を生成することができる。
Mooreは、プロの歌手の歌唱とフルートを吹くプロの音楽家、2人の呼気をイメージングすることでその新システムをテストした。フルートは、奏者が周辺空気に直接吹き込む数少ない楽器の一つである。「音楽家との研究は、そのシステムの機能が良好であり、様々な問題の研究に利用できることを直接裏付けた」。

空気の流れを変える
Mooreは現在、その方法を使って、呼気エアロゾルの広がりの抑制にマスクがどの程度効果的であるかを調べている。同氏は特に歌唱の研究に関心を持っている。研究が示すところでは、通常の会話よりも大声で歌ったり喋ったりしている時に、より多くのエアロゾルが吐き出されることが分かっているからである。同氏は、システムを振動に対して安定になるように、もっと広い範囲をイメージングするためにシステムサイズをさらに拡大することにも取り組んでいる。
同氏によると,その技術は、われわれが近づく距離、マスクをする要件がどの程度であるかをすでに明らかにしている。特に、戸外の場合である。同氏は、この成果を近々公表する予定である。
「パンデミックは、多くの音楽家に経済的カタストロフィをもたらした。また、われわれが提供できるどんな情報であろうと、音楽家の仕事への復帰を支援する情報は重要である。音楽界からの関心は大きい。われわれが成果を公表し始めると、ヘルスケアコミュニティも関心を示すと考えられる」と同氏は話している。

図 新しいイメージング技術を利用して、話している人の呼気を捉えた。これは、公表されたイメージング技術のデモンストレーションであり、その研究はさらに進められている。イメージングは、呼気に関連する温度変化だけを示している。これは、必ずしも息に含まれるウイルス粒子の動きを反映していない(Credit: Thomas Moore, Rollins College)。
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