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IDC Japan、2022年までの世界AR/VR関連市場予測

January, 9, 2019, 東京--IDC Japanは、世界のAR(Augmented Reality、拡張現実)/VR(Virtual Reality、仮想現実)のハードウェア、ソフトウェアおよび関連サービスの2022年までの市場予測を発表した。
 最新のWorldwide Semiannual Augmented and Virtual Reality Spending Guide 2018H1 によると、世界のAR/VRのハードウェア、ソフトウェアおよび関連サービスを合計した支出額は2018年の120.8億ドルから2019年は203.8億ドル、2022年には1223.7億ドルに達する見通しで、2017年~2022年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は69.6%と高い成長が見込まれる。
 「現段階でのAR/VR市場の形成状況は、この技術の普及が、今後10年以上に渡って拡大する上での世界的な規模での素地となるものである。イノベーターたちは幅広い産業基盤に従事しており、ハードウェアやソフトウェアの選択肢が拡大する中で、大きく変容するエンドユーザーのニーズに対応しようとしている」と米国IDC Customer Insights&Analysis リサーチディレクターであるマーカス・トーチャは述べている。
 世界全体でのAR/VR関連支出はビジネス向け市場が牽引するとみられ、2019年の合計関連支出では64.5%を占めるビジネス向け市場の比率が、2022年には80%を超えます。2019年、規模の面で期待される産業分野としては、個人およびコンシューマー向けサービス(16.2億ドル)、流通・小売(15.7億ドル)および組立製造(15.4億ドル)が挙げられる。また、2017年~2022年のCAGRの観点からでは、10産業分野がCAGR 100%を超える成長をするとみられ、中でも地方自治体(CAGR 123.7%)、卸売(同120.9%)が上位となっている。消費者向け分野は単一産業分野としては最大の規模(2019年で72.3億ドル)の立場を維持するが、その成長速度はCAGR 36.6%と他産業分野に比べ、スローペースになるとみられる。
 ユースケース別でみると、2019年時点では消費者向けの3ケースがAR/VR関連支出の上位を独占する。すなわち、VRゲーム(40億ドル)、ビデオ等のコンテンツ視聴(20億ドル)、そしてARゲーム(6.2億ドル)。ビジネス向けユースケースとしては、トレーニング(18億ドル)が上位に入るが、オンラインでの小売の展示(5.6億ドル)および産業の設備のメンテナンス(4.1億ドル)が確固たる地位を築くとみられる。産業の設備のメンテナンスは2017年~2022年のCAGRが119.2%と高く、2022年にはARゲームをほぼ追い抜くと予測される。同成長率が100%を超えるユースケースとしては、研究室での利用や小売での展示、解剖診断、人体内部のビデオ撮影などが見込まれている。
 「将来を見据えた企業は、AR/VRの両技術を積極的に採用する活動を続けている」と、米国IDC デバイスおよびAR/VRリサーチプログラムバイスプレジデントであるトム・マイネリは述べている。続けて、「2018年に登場した新しいハードウェアとソフトウェアは新しいユースケースをもたらすと同時に、既存のユースケースの使い勝手も向上させている。2019年には、大手ベンダーからも新製品が登場するが、これらがより広範なスケールでイノベーションをさらに推進することが期待される」と述べている。
 カテゴリー別では、2022年までハードウェアがAR/VR関連支出の半分以上を占め、ソフトウェアとサービスがそれに続くものとみられる。ハードウェアカテゴリーでの最大の支出はホストデバイス(PCなど)だが、ARヘッドセットはCAGR 128.3%と顕著な成長をとげるとみられる。ARのカスタムアプリ開発(同133.0%)、ARシステムインテグレーション(同130.4%)およびARコンサルティングサービス(同121.9%)などの成長に支えられ、ARソフトウェアのカテゴリーもそれに近い堅調な成長(同121.8%)を実現するものと予測される。AR関連の支出は、2022年までの予測期間を通じて、VRよりも高い比率での成長が見込まれる。
 地域別では、2019年は米国が65.9億ドルと最も支出が多く、次いで中国の59.8億ドル、日本(17.6億ドル)と西ヨーロッパ(17.4億ドル)がそれに続くが、西ヨーロッパは2020年には第3位になるとみられる。AR/VR関連市場が2022年まで急成長する市場としては、米国、カナダ、中国が挙げられる。2022年、カナダはAR/VR関連市場で4位(44.7億ドル)につけると予測される。
 他方、日本の2019年のAR/VR関連市場支出は17.6億ドル、2022年は33.7億ドルの市場に成長すると予測され、2017年~2022年までのCAGRは28.4%と予測される。ユースケースとしてはビデオ等のコンテンツ視聴やVRゲームがコンシューマー市場を牽引すると同時に、ビジネス市場ではトレーニングや映像制作が市場を形成していくと予測している。その他、治療・リハビリのユースケースは2022年の市場規模が5800万ドル、2017年~2022年のCAGRは170.9%と有望な市場であると見込まれる。また、同期間のCAGRはVRが36.6%、ARは56.4%、ホストデバイスは19.8%と堅調な成長が続くものとみられる。
 日本の予測を産業分野別に見ると、プロセス製造分野はCAGR 73.2%と高い成長が見込まれる他、運輸分野もCAGR 74.7%であり、有望な分野であると言える。これらに関して、IDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストの菅原啓は「2018年はビジネス分野ではAR/VRのトレーニング分野での利用が拡大し、VTuberなどコンシューマ領域での利用に関しても明るい兆しが見られる。ただ、AR/VRの利用体験者と未体験者の間に存在する溝は拡大する傾向にあり、このテクノロジーの利用が世界に伍していくためにも未体験者に向けての積極的な利用拡大を図っていくための継続的な努力が、この技術を利用するすべての人にとってますます求められることは言うまでもない」と提言している。
(詳細は、https://www.idc.com/)