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レーザビームシェイピングとレーザビーム評価

March, 19, 2021, 東京--2021年2月24日、レーザ協会第189回研究会「レーザビームシェイピングとレーザビーム評価」がオンライン開催で行われた。内容は、4セッションで構成されている。3番目のセッションを除いては、各社の扱う製品とアプリケーション及び最近のトレンドとなっている。細部は各社が紹介するメーカーのWebサイトが参考になる。

1.「世界初の透過型アダプティブオプティクスと最新のビームシェイピング事情」オーテックス(株) 渡邉篤氏
2.「独自開発した回折光学素子(DOE)を用いたビームシェイピングのご紹介」(株)スペースフォトン 川島勇人氏
3.「屈折型ビームシェイパ」千葉工業大 徳永剛氏
4.「非接触ビームプロファイラによる高出力レーザのフォーカススポットおよびフォーカスシフト測定」Ophir Optronics Solutions Ltd. MKS Instruments, Inc. マイケル モズジェチコフ氏
 以下では、3を除く各セッションの概要を簡単に紹介する。

1.「世界初の透過型アダプティブオプティクスと最新のビームシェイピング事情」 
 オーテックスの渡邉氏は、最初に「ビームシェイパーが求められる背景」を説明した。続いて、同社が扱う米ダイナミックオプティクス社(Dynamic Optics)、仏Cailabs社、英グーチ・アンド・ハウスゴー社(Gooch&Housego)、その他の関連製品を紹介した。
 同氏は、「ビームシェイパーが求められる背景」については、プロフィテット社から援用して説明している。
 ビームシェイパーとは何か。同社は、「ビームシェイパーはガウシアンビームをトップハットビームやドーナッツビーム、リングビームなど、切断、溶接、AM(Additive Manufacturing)、ブレージング、穴あけ、スクライビングなどさまざまなレーザ加工に有効なビームプロファイルに成形するための光学部品」と解説している。つまり、最近の精密加工状況が「ビームシェイパー」を必要としているという見方である。
 オーテックスが最初に紹介したのは、ダイナミックオプティクス社の製品デフォーマブルミラー、アダプティブレンズ、波面センサ。「マルチアクチュエータアダプティブレンズ」(MAAL)は世界的に初めてのものである。アプリケーションは、顕微鏡、レーザシェーピング、望遠鏡など。ダイナミックオプティクス社の説明によると、MAALは、多くのアプリケーションでデフォーマブルミラーを置き換えるアダプティブレンズであり、これによりコンパクトなアダプティブ光学系の設計が可能になる。
 アクチュエータはリング形状、境界が異なる2つの同心リングに設置されており、チャンバーは液体で満たされている。
 これらの製品に関連したアプリケーションと実績が多数紹介された。
 次に、Cailabs社製品(図1)、ビームシェイパー、アキシコンミラー、CWハイパワーレーザ用ビームシェイパーが紹介された。同社が対象とするアプリケーションは、テレコム、LAN、防衛、宇宙、レーザ加工、航空宇宙と多岐にわたるが、セッションではレーザ加工にフォーカスしている。

図1 CANUNDA製品ラインによるレーザ溶接。CANUNDA-HPビーム成形モジュールを使ってハイパワー連続波レーザを成形。対称(リング、中心スポットリング)、非対称成形などが可能。高い平均パワー(16kW実証)。CANUNDA-HPは、ロボットアームのファイバレーザに組込可能。

図1 CANUNDA製品ラインによるレーザ溶接。CANUNDA-HPビーム成形モジュールを使ってハイパワー連続波レーザを成形。対称(リング、中心スポットリング)、非対称成形などが可能。高い平均パワー(16kW実証)。CANUNDA-HPは、ロボットアームのファイバレーザに組込可能。


 グーチ・アンド・ハウスゴー社関連では、超音波光変調器の原理を紹介た後、CO2レーザ用AOM利用の加工例を説明。
 AOMは、同社の説明によると、光強度を制御し70MHzまでのスピードで変調するデバイス。音響波を利用して結晶内に回折格子を形成する。加えるRF信号を変えることで、信号に比例して回折光の量を変える。
 アプリケーションは、マーキング、材料加工、マイクロマシニング、ライダ、レーザ線幅計測など多様である。
 CO2レーザ用AOMを用いることで、熱影響の少ないCO2レーザ加工が可能になる、と紹介された。

2.「独自開発した回折光学素子(DOE)を用いたビームシェイピングのご紹介」
 スペースフォトンは、回折光学素子(DOE)の設計開発、DOEを用いたレーザシステム開発及びレーザ微細加工テスト(DOE搭載レーザ加工用光学ユニット)を行う茨城県つくば市の新興企業である。
 レンズは、従来の球面レンズの他に、­回折レンズ、メタサーフェスを利用した最新技術、メタレンズがあるが、スペースフォトンのフォーカスは、回折光学素子。つまり、光の波の性質(回折、干渉)を利用して集光点、焦点距離を規定する。DOEでは、素子の凹凸の組合せにより集光パターンを自在に形成することができる。
 同社のDOEの特徴は、「1本のレーザビームから任意形状を集光可能」、つまりビーム分岐ではなく結像(集光)作用があること。同社独自の設計により、光強度を均一に照射、光強度に強弱を付与、3次元的集光制御(超焦点深度設計など、既存光学系との連携により拡大・縮小パターン投影、広角投影が可能になる。
 新しい設計技術として紹介されたのは「最適位相パターン生成アルゴリズムを適用したコンピューテーショナルホログラムの生成」。これはフォトリソグラフィ技術(半導体製造技術)を適用したもので、電子ビーム描画装置、ドライエッチング装置などで作製する。
 DOEの主要アプリケーションとしては、加工技術、計測技術、表示技術が紹介された(図2)。

図2 DOEを利用した加工例

図2 DOEを利用した加工例


 加工応用の一端を見ると、レーザ加工では集光レンズを利用する従来加工法(逐次加工)とDOEを利用した一括加工では、加工時間に大きな差が出る。
 紹介されたのは、材料の穴開け加工、直線形状DOE利用シリコン表面加工、点列DOEマルチディンプル微細加工、金属薄膜直線スクライブ加工、SUS薄板レーザ溝加工など。
 その他、セミナーでは、計測、表示などさまざまなアプリケーション例が紹介された。

4.「非接触ビームプロファイラによる高出力レーザのフォーカススポットおよびフォーカスシフト測定」
 米MKSインスルメンツ社傘下のオフィールオプトロニクス社は、高出力レーザビームの新しい測定技術を中心に紹介を行った。
 高出力レーサービームサンプリングシステムでは、LBS-300HP-NIRについて説明。「ビームサンプリングと減衰システムの最大出力5000W長まで増加」「5kWあたり15MW/cm2超の最大出力密度に対応」を強調した(図3)。

図3 SP920sビームプロファイリングカメラ(波長範囲190~1100nm)とLBS-300HP-NIR。

図3 SP920sビームプロファイリングカメラ(波長範囲190~1100nm)とLBS-300HP-NIR。


 LBS-300HPレーザビームプロファイリングアッテネータのアプリケーションは、レーザ切断アライメント、レーザAM、SLM、DMLM、パワー計測、他のハイパワーレーザビーム分析アプリケーション、LPBM、3Dプリンティング。
 LBS-300HP-NIRは、ハイパワーレーザ向けビームスプリッター、特許申請中の技術である。5kW~15MW/cm2までのNIR(~1064nm)集光、コリメートレーザビームに対応。入射ビームの99.999%を透過し、0.0001%をカメラに入射する。
 さらに、新しい測定原理としてレイリー散乱原理を利用した計測が紹介された。
ソリューションは、非接触ビームプロファイリング。非接触であるので、無制限のパワー、メンテナンスフリーなどが特徴になる。また、「リアルタイム焦点スポット及び焦点シフト測定(業界初)」「数分内にセットアップ、数秒で測定」も特徴である。
 アプリケーション例としては、「溶接、焦点シフトのトラブルシューティング」「積層造形、SLMの表面品質と気孔率問題への対処」が紹介された(図4)。
図4 BeamWatch AMは、レーザベース積層造形システム向けレーザビームパラメータ計測用に設計された組込みレーザ計測システム。1kWまで、すべての重要なレーザビームパラメータを測定する。AMマシンに適したコンパクト発ケージのレーザ出力測定器。

図4 BeamWatch AMは、レーザベース積層造形システム向けレーザビームパラメータ計測用に設計された組込みレーザ計測システム。1kWまで、すべての重要なレーザビームパラメータを測定する。AMマシンに適したコンパクト発ケージのレーザ出力測定器。