国内リポート 詳細

自動車産業の明日を切り開くレーザ加工
第42回レーザ協会セミナー、開催される

December, 6, 2018, 東京--レーザ協会(会長:中央大学理工学部教授・庄司一郎氏:写真)第42回セミナー「自動車産業におけるレーザ加工」が11月28日(水)、東京都品川区の大崎ニューシティ・日精ホールにて開催された。
 我が国の基幹産業である自動車産業において、レーザ加工はどう関わっているのか、またどう関わって行くのか。セミナー参加者の多さが、その関心の高さを表していた。
 同協会は1972年2月、我が国で初めてレーザを加工に応用しようとしたレーザメーカ、レーザ輸入商社、ユーザ、学識経験者等によって、レーザ加工技術の発展および普及を目的に「レーザ加工研究会」としてスタートした。
 1977年には、レーザ研究の範囲を測定分野にまで拡げ、レーザ加工研究会を発展的に解消、名称を「レーザ応用技術研究会」と改め再スタートをした。その後1982年には、研究会の対象をレーザ応用技術全般へと拡大する意味で「レーザ協会」と改称、現在に至っている。
 同協会では、会誌の発行や定期的な研究会、セミナー、講習会、見学会などを開催、レーザ応用に関する技術相談も行うなど、レーザ応用技術の普及・発展のための活動を続けている。

注目の自動車産業とレーザ加工
 自動運転やEV、製造プロセスの革新による競争力の確保など、技術的な観点のみならず、市場の大きさやマスコミを賑わしているメーカ間の国際的な合従連衡でも関心を集める自動車産業。シンポジウムでは、レーザのユーザとも言える自動車メーカや部品メーカと、シーズ側のレーザメーカ、レーザ加工機メーカから最新の加工事例が紹介された。プログラムの題目と講演者は以下の通りだ。

◆「開会挨拶」レーザ協会会長:庄司一郎氏
◆「自動車メーカにおける生産技術」千葉工業大学:大関浩氏
◆「自動車部品におけるレーザ加工技術の適用と最近の進歩について」デンソ-:白井秀彰氏
◆「高出力ダイレクトLD発振器の最新動向とその適用」レーザーライン:武田晋氏
◆「TNGA エンジンへのレーザ加工技術の適用」トヨタ自動車:谷中耕平氏
◆「自動車・バッテリー製造におけるレーザ加工技術最前線」コヒレント・ジャパン:水谷重人氏
◆「自動車産業における最新レーザ加工技術」トルンプ:中村洋介氏

レーザ加工はSDGsとESGに適合
 会長の庄司氏は開会挨拶の中で、設立当初はレーザの黎明期であり、同協会は海外の情報をいち早く収集して、加工応用への可能性を探るために設立されたとその歴史を振り返った。現在の活動としては、会員を対象に「研究会」を年3回開催、これは午後半日を使ってホットなトピックスを含め、会員が興味あるテーマを深く掘り下げる勉強会という位置付けになっている。今回のような「セミナー」は年1回の開催で、まる一日を使って現場に直結したものから将来技術まで、産業界の立場に立ったホットな話題について、その分野の一流の講師を招いて実施している。
 この他にも地方活性化事業として、各地に赴き「地方研究会」を年1回行っている。地方の公設試験場とタイアップして、地元企業でレーザ応用技術に関心のある企業を対象に実施するというものだ。SDGs(持続可能な開発目標)とESG(Environment、Social、Governance)が注目される中、庄司氏は自動車産業におけるレーザ加工へのシフトは、この二つに適合したものだと述べ、挨拶を終えた。

「自動車メーカにおける生産技術」千葉工大:大関浩氏
 自動車のユニットインジェクタは、燃焼後の微粒子発生を抑制する燃料微粒化のための高圧噴射と、Noxや騒音を低減する燃料噴射の多段化を実現する部品だ。そこではシール面の幾何公差、はめあい公差幅、表面性状、噴射穴加工、噴射穴仕上げなどが、噴射特性に影響を及ぼす。
 噴射穴の内面を滑らかにすれば、流量損失を低減することができ、流れが規則正しい層流にすることができる。ところが、穴開け加工は外側からドリルなどで行うため、その内面に加工痕ができたり内側出口にバリができてしまう。これにより流量損失は増え、流れも乱流になってしまう。さらに、バリが残っていると燃料噴射によって燃焼室の中にバリが飛びん込んでエンジンを傷つける。そこで、加工内面の仕上げをしつつ、バリを取る必要性が生まれる。噴射穴の形状については、逆テーパ型にする必要があるという。
 大関氏は、レーザ加工、超音波加工、微細穴放電加工、ドリル加工などを比較検討して、その結果、ベストは放電加工との結論を出したが、加工機が簡単に入手できない等の理由でドリル加工を選択して、試作を行った。
 ドリル加工における留意点をいくつか上げると、噴射穴径限界値は直径0.15mm程度で、それより小径の加工は切りくずの排出不良による工具折損によって困難だという。この他、加工機械の主軸軸受は、同期・非同期の回転振れや回転振動の影響から、転がり軸受よりも静圧軸受の方が工具寿命と加工精度に優れている。加工油剤については、水溶性加工液より油性加工油の方が工具寿命は長くなるという。
 一方、放電加工は直径0.15mm以下の加工ができ、0.08mm程度までは可能とのこと。ドリル加工ではバリと穴の内面に加工痕が残ってしまうのに対し、放電加工では両方とも問題はない。放電微細穴加工には型彫り型と繰り出し型があるが、繰り出し型なら逆テーパ形状を作る事もできる。
 ドリル加工を選択した大関氏は、その弱点を克服するため電解バリ取り加工という手法を採用した。さらにシリコン系オイルと研磨粒子を混ぜ高圧で送りこむ流体研磨加工を行って、バリと加工痕の問題を解決した。流体研磨加工の最適化は、低粘度の流体を穴の中へ流量する時間によって行い、これによって逆テーパ形状の作製にも成功した。加えて、内部の加工形状計測は歯科用シリコンを流し込み、それを取り出すという非破壊検査を実現した。

「自動車部品におけるレーザ加工技術の適用と最近の進歩について」デンソ-:白井秀彰氏
 自動車部品の特徴としては、製品が小型、各製品のバリエーションが多い、極めて厳しい環境下での品質保証、高い信頼性、大量生産、生産ラインでのフレキシビリティ性、低コストといった点が挙げられる。一方、レーザ加工の特徴は、エネルギー行路の自由度が大きい、エネルギー集中性が高い、大気中での加工が可能、電磁界の影響がないなどで、加工対象は金属からセラミック、樹脂、布などの非金属まで幅広く、溶接や切断、穴あけ、焼き入れなど様々な加工ができる。
 1974年、GMがパワーステアリングギアハウジングの内面にレーザ焼き入れを行ったのが、自動車へのレーザ加工適用の始まりと言われている。その後1980年代にはレーザ切断、中盤にはボディパネルや樹脂部品の3次元切断が実用化され、ギヤやパネルのレーザ溶接やエンジンバルブのレーザ肉盛りへと進んで行った。
 同社では1973年、CCOセンサのリードとターミナルのかしめ部に、初めてYAGレーザでスポット溶接を行った。ただし、これは作業員が手で部品をセットする手動機レベルであって、自動化ラインに対しレーザを本格的に展開したのは1982年、オルタネータステータコアに1kWのCO2レーザを適用、その後はエアコン用の電磁クラッチプーリやディストリビュータ用シャフトなど、各部品の溶接にレーザを展開して行った。
 適用される材料も拡がってきた。自動車の小型・高性能化に伴って、より高強度、高機能な材料が求められるようになり、高炭素材料へのレーザ溶接が求められるようになった。
 同社では、電磁弁用高炭素ステンレス鋼の溶接を実用化、溶融形状をこれまでのワインカップ形状からタンブラー形状にすることで、最終溶融凝固部に発生する収縮応力の大幅低減を実現した。IC用銅リードのレーザ結線の実用化にも成功した。ターミナル表面にNiめっきを施して熱伝導バリアにするとともに、ガスのアシストおよび焦点位置の最適化、さらにレーザ照射波形の最適化によって、最終凝固部に収縮応力が発生せず、割れにくい形状を実現した。
 講演では、円周溶接による真円度変形制御法も紹介された。同社では、シミュレーションによる変形挙動解析によって真円度の変形メカニズムを考察するとともに、レーザ光をミラーで半分ずつ分割して光ファイバで伝送し、2方向から同時に照射して歪みを相殺する同時2分光方式を考案、二つのレーザ溶接ヘッド角度を90度にすることで変化量が最も少なくできることを見出した。
 白井氏は、加工プロセスをモニタリングして、その欠陥をレーザ出力へフィードバックすることで加工品質を確実に判別できる品質モニタリングや溶接部および溶融内部挙動の可視化についても紹介した。

「高出力ダイレクトLD発振器の最新動向とその適用」レーザーライン:武田晋氏
 同社のダイレクトLD発振器は近赤外域LD素子がベースとなっている。これを短冊状に切り出し、モノリシック・リニア・アレイ化してLDバーを作製(>300W)、さらに複数個積層して積層アレイLD化(500~4kW)して、ここから発振するレーザ光を直接集光する。波長/偏光合成によって、さらなる高出力化(25kW)も可能とのことだ。
 トップハットビームと呼ばれる非常に均一なビームも大きな特徴で、このビームを基にして用途に合わせた様々なビーム形状を作ることができる。レーザ焼き入れやレーザクラッディング、AM(アディティブ・マニュファクチャリング)などに有効で、ビームエッジ部分の損失を無くした効率の良いビームは、レーザろう付けにも有効だという。
 同社のダイレクトLD装置には、第6世代のオールインワンシステムと位置付けられるLDFシリーズ、装置搭載に最適な19インチラック式超コンパクトモデルのLDMシリーズ、ビームコンバータ付LDFシリーズなどがラインナップされている。
 1μm帯レーザでは難しかった銅や金など、高反射材の溶接で期待を集めているのが高出力青色半導体レーザだ。同社では最近、波長450nmの青色半導体レーザ素子のアレイ化によって、出力730Wを実現した。同社が参画しているドイツの「BlauLas」開発プロジェクトの成果で、50Wの青色半導体レーザを10個積層、さらにカップリングを行って実現した。来年度市販に向け動き出しているとのことだ。
 欧州では、腐食耐性が高く経済的にもメリットが得られると、自動車の車体へ溶融亜鉛めっきを使用する傾向が高まっているという。この動きに対応するため、同社では矩形ビームをメインに、さらに小さな二つのフロントスポットを加えたトリプルスポットモジュールを開発、すでに溶融亜鉛めっき鋼板のブレージングに採用されているとのことだ。
 軽量化の観点からアルミニウムにも注目が集まっている。その対応のため、同社ではトリプルスポットの応用として、最新のビーム整形技術であるスポット・イン・スポットを開発した。これは(真円とより大きな正方形の)形と輝度の異なる二つのレーザビームを重ね合わせたもので、これもアルミニウム溶接に採用されているという。

「TNGA エンジンへのレーザ加工技術の適用」トヨタ自動車:谷中耕平氏
 TNGA(Toyota New Global Architecture)をベースとした新エンジン開発において、低燃費と高出力を両立させるためのキーデバイスがレーザクラッドバルブシートだ。高い耐摩耗性や耐熱性が求められるバブルシートには、これまで鉄系焼結バブルシートを圧入する方法が採用されてきたが、この方法ではシート保持に必要な肉厚を確保しなければならず、ポート形状に制約ができ圧損が生じていた。これに対し、レーザクラッドバルブシートは、吸気ポートの形状を直線化することで、高い気流速度を維持したまま燃焼室に吸気を導入することができ、ポート下面のスロート部で気流を剥離させ逆タンブルを抑制することで流量計数を向上させることができる。
 これまでのレーザクラッドバブルシートの生産は、CO2レーザを用いていたので設備が大型で維持管理も難しく、それゆえ国内の生産ラインのみに導入されてきた。これを海外展開するには省エネや省スペースが必要で、そのためには新しいクラッド工法の開発が必要となった。国内生産ラインということは当然、燃料もガソリンのみが対象だった。ところが、環境保全の高まりによって南米を中心に各国でエタノール混合燃料が普及、この燃料はシート摩擦量を増加させてしまう性質があり、特にTNGAの高速燃焼ではさらに摩擦量が増えてしまうという問題があった。そこで新しいクラッド材料の開発が必要となった。
 同社では、半導体レーザの採用およびレーザ光、粉末、シールドガスを一体で供給可能な同軸ノズルによる斜方向成形技術を確立して、小型かつエネルギー効率に優れたレーザ回転型クラッドシステムを開発、さらにビーム形状と粉供給パラメータの最適化によって、割れや欠肉といった欠陥を抑止できる品質を確保した。
 新しいクラッド材料には、耐摩耗性と肉盛り性ならびに被削性の両立のために、高い硬質粒子体積率においても割れが発生しない硬質粒子を微細に分散した金属組織が求められた。同社では、Cu-Fe系を基本とした合金設計によって硬質粒子の増量と肉盛り時の耐割れ性を両立させるとともに、NbCの添加によって耐摩耗性と被削製を両立させた新合金Cu-Ni-Fe-Mo-Si-Nb-Cを開発、TNGA用エンジンへの採用課題をクリアした。
 電動化ユニットの急増によって、今後は電気/熱伝導性に優れた銅の使用が増えて行く。そのため青色レーザの高出力化が求められている。軽くて強いクルマを実現するマルチマテリアル化では、樹脂やアルミニウムといった軽量素材の加工技術や異種材料接合技術も重要だ。一方、人や地球に優しい工場づくりのためには安全・安心が求められる。小型・高効率レーザの登場やスパッタレスといった作業環境なども整備しなければならない。もちろん競争力という観点からは、汎用の加工技術や高速加工技術、より低コストのレーザなども必要だ。「これら課題にも取り組んで行きたい」、中谷氏はそう述べて講演を終えた。

「自動車・バッテリー製造におけるレーザ加工技術最前線」コヒレント・ジャパン:水谷重人氏
 同社は2018年、ファイバレーザをベースとした新しい高機能溶接のアプローチとしてCleanWeld技術を発表した。この技術を用いれば、従来手法と比べて最大80%もスパッタを低減でき、クラックやポロシティの少ない溶接結果を得ることができるという。プロセスの一貫性にも優れ、最大で40%も出力を抑え、効率のよい溶接加工も可能になるとのことだ。
 CleanWeld技術の主な応用例の一つが、モード可変ビーム搭載のファイバレーザ「ARM(Adjustable Ring Mode)」による独自のビームプロファイル技術とアプリケーションノウハウだ。プロセスごとに最適化されたオプティクスや加工ヘッド、また溶接における豊富な知識と最適なプロセス開発を行える十分な設備やリソースによって、顧客ごとに異なる様々なニーズに応じて、柔軟にカスタマイズしたレーザ溶接ソリューションを提供できるという。
 ARM は、アプリケーションごとの加工要件に応じて、一つのファイバからセンターとリング、二つの同心円状のビームを独立して、かつ連続的にリアルタイム制御ができ、最適なプロセスを作ることができる。独自の5段階反射光対策と出力ループモニタによって高反射材にも最適だという。一般的な加工ヘッドや光学系に接続が可能で、既存設備への置き換えも容易、切り幅が必要な厚板切断、板厚や材質の異なる加工、スパッタの少ない高品質な溶接を実現するという。
 具体的適用例としては、自動車車体などにおいて広く普及している亜鉛メッキ鋼板溶接では、先ず外側のリングビームの前半部で予熱を始め、センタービームで中間メッキ層から発生する亜鉛ガスの排出を促し、リングの後半部分で本溶接を行うという流れで、加工が非常に難しいとされる亜鉛メッキ鋼板のゼロギャップ溶接を実現することが可能だという。
 アルミニウム溶接の場合には、センターとリングに分かれたビームプロファイルを応用することで ワークに対して先に照射されるリングビームの先端部分で材料に予熱を与え、次にセンタービームで溶融池を形成、さらにリングビームの後半部分で溶融池を安定化させることでポアやスパッタを低減、溶け込みの深さやビード表面の安定した高品質な加工結果を得ることが可能だという。リングビーム先端部分を用いて、アルミニウムの酸化被膜を除去するという効果も期待されている。
 講演では、xEV へのレーザ加工適用も数多く紹介された。xEVとはハイブリッド車からEV、燃料電池自動車までを含めた総称で、日本語では「電動車」と呼ばれている。水谷氏は、バッテリーセルのパック製造へのレーザ加工について、活物質の除去、表面構造化、乾燥工程、電極切断、セパレータ切断、タブ溶接、CID溶接の他、電池ケース蓋の溶接や角型バッテリーの封かん溶接、バスバーやコネクタ部品の溶接などを紹介。電動パワートレインのレーザ加工については、モータ部品のクリーニング、ヘアピン溶接の他、標準ファイバレーザに搭載できる、欧州自動車製造規格QDファイバーコネクタ内にセンサを内蔵した加工モニタリングについても紹介した。

「自動車産業における最新レーザ加工技術」トルンプ:中村洋介氏
 中村氏は、2030年には自動車の約半分がハイブリッド車やEVになるという同社の予測を紹介。続いて自動車の電動化に関し、新しい応用としてモータ部分の銅製ヘアピンのデコーティング(被覆除去)と溶接について解説した。
 デコーティングにおいては、被覆の材料特性によって使用するレーザと加工方法が異なるが、レーザを用いたデコーディングは、従来適用されてきたメカニカル・ストリッピングに対し、倍以上のスピードでの除去が可能だという。メカニカル・ストリッピングは、被膜だけでなく銅も一緒に除去してしまうという欠点があり、次の工程で銅どうしを溶接する際に間にギャップができ、溶接時にその部分にレーザが入り込んで余計な加工をしてしまう。
 一方のヘアピン溶接では、同社は「BrightLine Weld」という独自の技術を開発した。これはレーザ1台から発振したビームを「2 in Fiber」という二重コアファイバを用いてビームプロファイルを調整、これによりスパッタを劇的に低減できるというものだ。さらに、これも独自開発の画像処理システム「VisionLine」が部品の位置を自動検知して、その情報をコントローラに転送することで、例えギャップが存在したとしても、常に正しい位置に溶接が施され、均一な加工結果が得られるという。
 電子部品応用においては、同社は銅の溶接にはディスクレーザをベースとした第2高調波の515nmグリーンパルスレーザを使用している。中村氏は、銅の溶接時における赤外ファイバレーザとグリーンパルスレーザとの比較を示した。赤外ファイバレーザを用いた場合は、レーザの光学特性と材料特性に依存して、溶接部分のビード幅が広くなって行き溶接品質が悪くなる。これに対しグリーンパルスレーザの場合は、ビード幅も変わらずスパッタは97%も低減できるという。スパッタが飛ばないので、ほぼ完成体の状態の製品に対しても溶接が可能ということだ。
 中村氏は最後に、将来技術として平均出力1kWのグリーンのCWディスクレーザを紹介、伝送用光ファイバのコア径は50μmで、ここまで絞ることができるビーム品質を達成しているという。さらに、1~2ピコ秒レベルで1J・1kW(平均出力)という最先端の超短パルスディスクレーザにも言及。波長は赤外域からFHGまで可能で、応用としてはX線やEUV、アト秒レーザの発振などの基礎研究分野の他、50mJあればCO2レーザに代わってCFRPなどの切断や建材用・自動車用ガラスの切断も期待できると述べ、講演を締め括った。

(川尻 多加志)