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浜松ホトニクス、PHOTON FAIRを開催

November, 22, 2018, 浜松--「PHOTON FAIR 2018」浜松ホトニクス総合展示会が、11月1日(木)から3日(土)の3日間、アクトシティ浜松(静岡県浜松市)で開催された。
 PHOTON FAIRは、浜松ホトニクスが主催する5年に1度の総合展示会だ。第1回の開催は1980年で、今回で13回目を迎える。同社では「光で何ができるか」をメインテーマに据えて、これまでそのビジョンや最新の技術・製品を紹介してきた。
 今回も、技術や製品の展示はもちろん、講演会や40セッションにも及ぶセミナーが開催された。同社では、今回のフェアを、その技術・製品や将来ビジョンを多くの人々が見て、光技術の多様な可能性を感じてもらう機会と位置付けている。
 1日と2日には、中ホールにおいて講演会が、コングレスホールではセミナーが開催され、展示会は3日間を通して、展示イベントホールで行われた。

光技術の可能性を展望する講演会
 講演会では、各分野で活躍するキーパーソンがゲストに招かれ、それぞれの立場から光技術の持つ可能性について語った。
 同社の代表取締役社長、晝馬明氏は、光技術を「Key Enabling Tech­no­logy」として捉え、創業時のベンチャー精神を忘れることなく、新たな光の応用産業を創り上げたいと述べ、さらに「日本のテレビの父」、高柳健次郎氏が世界で初めてブラウン管に「イ」という字を映し出すことに成功した1926年から100年後の2026年に向け、その光電変換技術を受け継ぎ、新しい「イ」の字に向けて挑戦をすると述べている。講演は、初日に行われた晝馬氏の「光への挑戦-2026年の新しいイの字にむけて-」でスタートを切った。
 続いての登壇は、カリフォルニア大アーバイン校教授のブルース・トロンバーグ氏。生体組織の構造と生化学物質の組成の特徴を、ミクロからマクロまでの領域で計測できる生体光学技術は、血液量、水分量、脂肪量、酸素飽和度、酸素消費量、心拍数、呼吸数、血流量といった生体の機能的パラメータを評価でき、今これをウェアラブルで、かつ非接触で計測できるデバイスに注目が集まっている。トロンバーグ氏は「Deve­lopment of Wearable and Bed­side Bio­pho­tonics Technologies for Per­so­na­lized Health」で、その最新動向を語った。
 二日目には、トヨタ自動車・先進技術開発カンパニー常務理事の鯉渕健氏による講演「すべての人に移動の自由を-トヨタの先進安全・自動運転技術開発への取組み-」が行われた。
 数十年に渡り、世界中で人々が夢見て挑戦し続けてきた自動運転。近年、LiDARなどのセンサの性能や知能化技術の進歩により、その実現が視野に入ってきた。一方で、自動車業界だけではなくIT企業なども参入、グローバルな開発競争は激化している。
 講演では、同社の先進安全・高度運転支援システムが解説されるとともに、クルマの在り方を大きく変える、同社における自動運転技術開発への取組みと技術が紹介された。さらに、自動運転技術の実用化に向けてのルール作りなど、社会的課題も取り上げられた。
 昼食を挟んでの講演は、スタンフォード大医学部循環器科主任研究員の池野文昭氏の「光技術が医療を通じて世界に貢献するために」。
 池野氏は、高柳健次郎氏や本田宗一郎氏の「研究は人の幸せのため」、「会社は人間を研究するところ」といった名言を例に、技術は手段であると強調した。さらに、日本の医師や看護師は多忙で疲弊していると指摘、しかしながら、そこにニーズがあると、ビッグデータやAIを用いた診断などに期待を寄せる一方、「神の手」と言われる優秀な日本人医師のワザを、世界に伝授できるようにもなると述べた。
 池野氏は、日本の高齢社会は逆にチャレンジャブルな世界との認識を示し、成功したベンチャー企業には、必ず後ろで支える経験豊かなベテランがいると、米国の事例を示しながら、縦のダイバーシティーが重要と指摘、日本には定年を過ぎた優秀なベテランがたくさんいるのだから「壮年よ、大志を抱け!」と檄を飛ばし、「最初に海に飛び込むファーストペンギンになれ」と、講演を締めくくった。

40セッションものセミナー
 光技術に関連したセミナーは、2日間で合計40セッションが開催され、同社の技術者・研究者が最新の技術、製品、研究を紹介するとともに、専門分野に精通した社外講師によるセミナーが2本行われた。
 その内、初日に行われたのは、九州大大学院工学研究院応用化学部門准教授の中野谷一氏の「基礎研究が切り拓く明るい有機エレクトロニクス」、2日目には、大阪大産業科学研究所生体分子機能科学研究分野教授の永井健治氏による「超次元ライフイメージングの展望」が行われた。

最先端技術・製品が一堂に会した展示会
 展示会では、「くるま」、「くらし」、「健康・医療」、「環境」、「モノづくり」、「学術研究」の6つのゾーンで、同社の最先端の技術や製品が披露された。各ゾーンを紹介しよう。
 くるまゾーン:自動運転、電動化、先進HMIなど、「もっと安全・安心・快適を」をテーマに、自動車の先進化で注目を集めるLiDAR用のアバランシェフォトダイオードやパルスレーザダイオード、MEMSミラーなどが展示された。
 くらしゾーン:セルフケアやスクール、ホーム、フード、レジャーといった生活シーンで活躍する赤外高感度測距イメージセンサ、レンズやミラーを使わず2次元的な発光パターンを出力できる波面制御面発光レーザ(iPMSEL)などが紹介された。
 健康・医療ゾーン:テーマは、効率的な創薬や新たな治療法の確立。光ファイバとカテーテルを用いて緑色レーザを照射して血栓だけを溶解する技術やPET用MPPCモジュール、検体検査装置用光電子増倍管などが展示された。
 環境ゾーン:「地球の健康診断」をテーマに、水質・土壌、大気、エネルギー・資源に焦点を当て、展示は質量分析用イオン検出器やガス分析用赤外線検出素子、近赤外用イメージセンサ、中赤外半導体レーザなど。
 モノづくりゾーン:未来のモノづくりやスマートファクトリー実現のための課題を解決すると期待されるX線ラインセンサカメラやラマン分光モジュール、超短パルスレーザ、UV-LED光源などを紹介。
 学術研究ゾーン:科学技術の進展のため、物理、化学、生物といった切り口から光技術の有用性・重要性を示すとともに、光の持つ無限の可能性が紹介された。展示されていたのは、20インチ光電子増倍管や福島第一原発の燃料デブリ取り出し用耐放射線撮像管カメラヘッドなど。
 会場では乳腺がん細胞スフェロイドの深部観察ができるSCAN BLOCK2光子顕微鏡やテラヘルツ差周波発生量子カスケードレーザ、全偏波保持ファイバレーザを用いたフェムト秒レーザ、光音響イメージング用の2波長マイクロチップレーザなども注目を集めた。

(川尻 多加志)