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高効率次世代太陽電池への重要なステップを開く

October, 30, 2015, Cambridge--非常に効率のよい太陽電池の開発を促進すると考えられる、一重項分裂として知られる過程の背後にあるメカニズムを初めて研究者が直接観察した。
 国際研究チームは、有機分子における神秘的な量子現象がどのように起きるかをリアルタイムで観察した。
 ケンブリッジ大学(University of Cambridge)を中心とする研究チームは、超高速レーザパルスを使って単一光粒子、つまりフォトンが、一重項分裂として知られる過程を経てエネルギー的に励起された2つの粒子、つまりスピン三重項励起子にどのように変換されるかを観察した。一重項分裂がコントロールされるなら、太陽電池は取り出せる電流量を2倍にすることができる。シリコンのような従来の半導体では、フォトンが吸収されると1つの自由電子が生成し、それが電流として収集される。しかしある材料は、その代わりに一重項分裂を起こし、そこでのフォトンの吸収は2つのスピン三重項励起子の生成となる。
 オランダ、ドイツ、スウェーデンの研究者と協働して、ケンブリッジの研究チームは、この「1つで2つ」の変換は捉えがたい中間状態が関係しており、そこでは2つの三重項励起子が「エンタングル」していることを確認した。これは量子理論の特徴であり、個々の励起子の特性を本質的にそのパートナーにリンクさせるものである。
 超高速レーザパルス(フェムト秒)を一重項分裂を起こす有機材料、ペンタセンに照射することによって研究チームは、このエンタングル状態を初めて直接観察することができ、どのように分子振動がそれを検出可能にし、量子動力学によってその生成をどのように促進するかを示した。成果は、Nature Chemistryに発表されている。
 「一重項分裂の過程を新しい太陽電池技術に利用すると、太陽電池のエネルギー変換効率は著しく高まる」と同大学Cavendish研究室のDr Alex Chinはコメントしている。「しかし、その前に、励起子分裂が微視的レベルでどのように起こるかを理解する必要がある。この素晴らしいプロセスをコントロールするには、これが基本的要件となる」。
 リアルタイム一重項分裂観察の重要課題は、エンタングルしたスピン三重項励起子が本質的にほぼ全ての光プローブに対して「ダーク」であると言うこと、つまり光によって直接創ったり壊したりできない。ペンタセンのような材料では、第一段階(これは見える)は光の吸収、つまりスピン一重項励起子として知られる単一の高エネルギー励起子を創る光の吸収である。一重項分裂がエネルギー的により小さな三重項励起子に継続して分裂するので、そのプロセスの名前がついているが、何が起こっているかを見る力は、そのプロセスが起こると消えてしまう。
 これを回避するために研究チームは2D分光法として知られる強力な技術を用いた。これは連動した超短レーザパルスで材料を叩き、励起サンプルによって放出される光を計測する方法。連続するパルス間の時間を変えることによって先行パルスによって吸収されたエネルギーが別の状態にどのように変換されるかをリアルタイムで追跡することができる。
 このアプローチを用いて研究チームは、ペンタセン分子がレーザパルスによって振動させられる時に、分子形状のある変化によって三重項励ペアが短い光吸収となり、したがってその後のパルスによって検出可能であることを見いだした。これらの周波数以外を注意深く除去することにより、弱いけれども間違うことのない三重項ペア状態からの信号が明らかになった。
 次に研究チームは、分子が振動しているときに、それが新たな量子状態を持つことを示すモデルを開発した。その量子状態は、光吸収一重項励起子とダーク三重項ペアの両方の特性を同時に持っている。このような量子の「重ね合わせ」は、シュレディンガーの量子理論で知られており、三重項ペアを見えるようにするだけでなく、光が吸収される瞬間に分裂が直接的に起こることを可能にする。
 「実際の材料で最適化された分裂は、静的な準備と分子のエネルギーだけではなく、分子の動きと量子動力学が同様に重要であることをこの成果は示している。それは、高効率の太陽電池への新たな道を開くための重要な1段階である」とDr Akshay Raoは話している。