September, 15, 2015, 仙台--東北大学大学院工学研究科の小山裕教授の研究グループは、光と電波の両方の特徴を併せ持つ新しい光「テラヘルツ波」の光源を独自に開発し、それを用いて、紙幣等に貼付されたごく薄いテープ(髪の毛の半分から1/4程度)を高速に非接触で検出する技術の開発に成功した。
紙幣等の変造や損傷修復のために、ごく薄い樹脂テープ貼付が行われることがあり、これらの検出には、現在主に接触式の段差計測によって行われるのが一般的な方法。しかし接触式であるため、極薄テープ検出に限界があり、検査速度にも制限が生じており、場合によっては紙幣等の損傷を招く場合もある。
研究グループでは独自の電子デバイステラヘルツ光源及びレーザテラヘルツ光源を開発し、非接触でごく薄い貼付されたテープ等を検出することに成功した。
研究成果は、テラヘルツ光の人体に安全でありながら、紙幣や樹脂等には高い透過性を示す特徴を十二分に活かした「キラーアプリケーション」の一つであり、この成果により紙幣等の変造検出等の事務実務分野で世界中に普及する可能性が広がった。
研究グループはテラヘルツ光源開発及びそのための非線形光学結晶の結晶成長から行っている。各種レーザ励起光源や電子デバイス光源を自ら構成し、医薬品やタンパク質等の広範な有機物のテラヘルツデータベースの構築や、様々な有機・無機材料のテラヘルツ物性を収集そして解明してきた。それが今回の研究成果の基盤となっている。
今回、さらに、小型テラヘルツ光源として独自に構成した種々の周波数を発生する半導体電子デバイス等を用い、独自のテラヘルツイメージング装置を設計した。その上で、色々な材質が用いられる紙幣類や樹脂テープ類のテラヘルツ透過特性をデータベース化し、テラヘルツ光の反射特性を把握した上で、最適な撮像条件により、紙幣類に貼付されたごく薄いテープ(髪の毛の半分から1/4程度)を明瞭に可視化することに成功した。
このテラヘルツ光を使った新しい検査法によれば、世界中で日常的に行なわれている紙幣類の点検作業が大幅に効率化出来る。現在の検査法では、接触式の段差計測が主要であるため、検出できるテープ類の厚さや検査速度に限界があり、また紙幣の損傷を招く場合も考えられる。しかし、今回開発されたテラヘルツ方式の検査法では、非接触で検査が可能であるため、検査の高速化が望めるとともに、損傷を与えることもない。さらに、従来の透過検査に用いられるエックス線やガンマー線等の放射線と違い、安全に非接触・非破壊で高効率な紙幣類の検査を実現する事が出来ると言える。