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耐熱性に優れ、光をよく反射する断熱アルミナ膜を開発

August, 27, 2015, つくば--産業技術総合研究所(産総研)化学プロセス研究部門膜分離プロセス研究グループ、小平哲也主任研究員、水上富士夫客員研究員は、川研ファインケミカル株式会社(川研)と共同で、高い断熱性能と可視光~近赤外領域にて光反射率70 %以上を併せ持つ銀色の高耐熱性アルミナ膜を開発した。
 この膜は1000 ℃の耐熱性と同時に光反射能力を有するアルミナ多孔質膜であり、アルミナナノファイバ(太さ約6 nm、長さ約3000 nm)のゾル溶液にアンモニアを加えて乾燥させるという簡単な方法により調製可能である点も特徴であり、さまざまな応用分野への展開が期待される。
 産総研と川研は、太さが10 nm以下、長さが1000 nmを超すアルミナのナノファイバを水性ゾルとして合成することに世界で初めて成功し、その用途の開発を行ってきた。今回、このゾルから作製したアルミナ膜の光反射能力が高いことを発見したことを契機に、高性能な断熱材料としての開発に取り組んだ。
 これまでに、アルミナナノファイバゾルを乾燥させることにより、ナノファイバが平行に並んだ構造で、透明かつ多孔質の膜が得られている。断熱材として求められる条件の一つに高い空隙率がある。ナノファイバ間の反発力を弱め、その配列を乱すことにより乾燥後の空隙率を上げるために、ゾルにアンモニアを添加して乾燥させる方法を考案。調製条件を最適化し、可視光領域から近赤外領域で、優れた光反射能力(500~1400 nmで反射率70 %以上)を有する材料の合成が実現できた。
 アルミナは酸化物であり、その化学組成からは金属のように光を反射することは説明できない。走査電子顕微鏡(SEM)により、この光反射膜の微細な形態を観察し、網目状の層(層状網目構造)が積み上がった構造(積層構造)であることが分かった。このような積層構造は銀色の光反射を呈する表皮を持つサンマなどの魚類や、真珠の表面層でも見られるもので、この断熱アルミナ膜の銀色は構造色の一種。今回開発した光反射・断熱アルミナ膜の光反射能力は生物と同様のメカニズムにより得られたもので、生体模倣材料の一種とも言える。
 一方、断熱性能については、乾燥しただけのアルミナ膜の熱伝導率は0.095 Wm-1K-1であったが、1000 ℃で焼成することにより、光反射の性能は維持しつつ、0.055 Wm-1K-1まで性能が向上した。このように断熱性能と光反射能力のどちらも高温に曝しても維持されているのは、今回開発した膜が無機酸化物であるアルミナだけから構成され、層状網目構造とその積層構造が安定に維持されるためである。

(この技術の詳細は、ドイツの学術誌Advanced Materialsに掲載される。オンライン版は2015年8月25日20:00(日本時間)に掲載。また同誌編集部により重要論文に選出され、出版社のWebサイトMaterialsViewsに近く概要が紹介される)。