July, 17, 2015, Frankfurt--有機エレクトロニクス分野の大きな前進が、従来シリコン優位の半導体技術に変革を起こそうとしている。
特注の有機分子により、個別アプリケーションに完璧に適用できる、軽量で、機械的に柔軟な電子成分の生成が可能になる。ゲーテ大学(Goethe University)の化学チームは、分子構造にボロン(ホウ素)原子を的を絞って導入することで、新しいクラスの有機発光材料を開発した。Angewandte Chemie(応用化学)誌に発表された成分は、強い青色蛍光を特徴としており、有機発光ダイオード(OLED)での利用に関心が集まっている。
グラファイト形状の炭素は、金属と同じように電流を通す。また、その2D形状、グラフェン層は、極めて魅力的な光学的、電子的特性を持っている。グラフェンでは、無数のベンゼン環が融合して一つのハニカム構造を形成する。この構造のセクション、いわゆるナノグラフェン、つまり多環芳香族炭化水素(PAHs)が有機エレクトロニクスの重要な基盤をなす。
ゲーテ大学無機・分析化学研究所のMatthias Wagner教授は、「長期にわたり、研究の焦点は、ナノグラフェンの特性に影響を与えるのは、そのエッジを化学的に操作することによるという考えだった。しかし、最近では、研究者は、カーボンネットワークに外来原子を内蔵させることによって内部構造を変えることもできるようになっている」と説明している。
新しいボロンを含むナノグラフェンと類似のボロンフリー炭化水素との比較は、ボロン原子がOLED発光団の2つの重要な特性に決定的な影響を持つことを立証している。蛍光色は非常に好ましい青色スペクトラル域にシフトし、電子を運ぶ能力が大幅に向上する。今日までは、ボロンを含むPAHsの全潜在力は限定的にしか利用できなかった。これは空気や湿気に対する感度のためである。「こうした問題はわれわれの材料では起こらない。この点は実用的なアプリケーションでは重要である」と、Valentin Hertz氏は説明する。同氏は、博士論文でこの化合物の合成を報告している。
HertzとWagnerは、開発したグラフェン薄片のような材料はポータブル電子デバイスでの利用に特に適していると見ている。将来世代のスマートフォンやタブレットの薄膜ディスプレイ、大型のスクリーンでも、デバイスを使わない時には巻き取ったり、畳んでスペースを節約できるからだ。