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EPFLとICFO、グラフェンベースの可変、高感度センサを開発

July, 14, 2015, Lausanne--EPFLとICFOの研究チームは、タンパク質や薬品などの分子を検出するためにグラフェンからできたセンサを開発した。これは、実用的なアプリケーションでグラフェン固有の電気的光学特性を利用する初めてデバイス。
基礎研究の多くの分野が、比類のない特性を持つグラフェンに関心を寄せている。グラフェンは、炭素原子の単層でできていることから、軽量で強靱という特徴を備えている。また、優れた熱的電気的伝導性も特徴。潜在能力は無限であることは明らかではあるが、今日までに実証されたアプリケーションはほとんどない。EPFLのバイオナノフォトニックシステム研究所(BIOS)の研究チームは、スペインのフォトニック科学研究所(ICFO)の研究チームと協働して、新たな研究成果を発表した。研究グループは、再構成可能な高感度分子センサ開発のためにグラフェン独自の電気的光学的特性を利用した。
研究グループは、よく知られた分子検出法、赤外吸収分光法の改善にグラフェンを利用した。標準的な方法では光は分子励起に用いられ、その自然の性質に応じて振動が異なる。この振動によって分子の存在がわかり、特定さえできる。この「シグナチャ」は反射光で読み取ることができる。
しかしこの方法は、ナノメートルサイズの分子の検出には効果的ではない。分子に向かっていく赤外フォトンの波長は約6μm、それに対してターゲットは数ナノメートル(nm)しかない。反射光からそのような小さな分子の振動を検出するのは非常に難しい。
ここでグラフェンが使えるのである。配置が正しければグラフェンは光を精密に表面上の点に集光し、そこにあるナノメートル分子の振動を「聞く」ことができる。「最初は、電子ビームで、さらに酸素イオンでエッチングすることでグラフェン表面にナノ構造のパタンを描く。光が届くと、グラフェンナノ構造の電子が振動を始める。この現象は、局所表面プラズモン共鳴として知られており、これによって光が、ターゲット分子のサイズに匹敵する微小な点に集光される。するとナノメートル構造を検出できるようになる」とDaniel Rodrigo氏は説明している。

分子構造を見るためにグラフェンをリアルタイムで再構成
ナノメートル分子の存在を特定するだけでなく、こプロセスは分子が構成されている原子を結びつけている接合の性質も明らかにすることができる。
分子が振動すると、ただ一つのタイプの「音」しか発せられない。それが振動の全範囲を作り出すが、これは異なる原子を結びつけている結合によって生成される。「こうした振動がフィンガープリントとして働き、これによってタンパク質のような分子を特定できる、その健康状態さえも指摘することができる」と共著者、Odeta Limaj氏はコメントしている。
研究グループは電圧を印可することでグラフェンを調整して周波数を変える。これは現在のセンサではできない。様々な方法でグラフェンの電子を振動させることによって、表面上の分子の全振動を「読み取る」ことが可能になる。「われわれは、グラフェンに付着させたタンパク質でこの方法をテストした。これによってその分子の全貌が明らかになった」とHatice Altug氏は語っている。
新しいグラフェンベースのプロセスは、研究者にとっては、様々な意味で大きな前進である。まず、この単純な方法は、たった1個のデバイスを用いて複雑な分析を行うことを可能にする。このような分析は、通常、多くの異なるデバイスを必要とする。また、生物サンプルにストレスを与えることなく、変更を加えることなくこの全てを行うことができる。Altug氏は「アプリケーションは多い。われわれは生体分子にフォーカスしているが、この方法はポリマや他の多くの物質でも使える」と付け加えている。