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LMU/MPQ、ナノシステム向けに新しい顕微鏡

July, 1, 2015, Munich-- LMUのTheodor W. Hänsch 教授の研究チームは、光マイクロキャビティを用いて信号を1000倍に強め、同時に基本的な回折限界に近い解像度を達成する技術を開発した。
 同教授は、マックスプランク量子オプティクスのディレクタ、ルートヴィヒマクシミリアン大学(LMU)ミュンヒェンの実験物理学チェア(Director at the Max Planck Institute of Quantum Optics and Chair for Experimental Physics at the Ludwig-Maximilians-Universität Munich)。
 個々のナノ粒子、高分子の光学特性を研究できるようになると、生物学、化学、ナノサイエンスなど多くの分野で興味深い発展性が期待できる。
 ナノ粒子の大きな集合体の分光計測では、サイズ、形状、分子構成の個別差が消失し、平均量だけが抽出されることになる。したがって単独粒子を検知できる技術の開発に大きな関心が向けられている。「われわれのアプローチは、光が数十万回周回する光共振器内部のイメージングに用いられるプローブ光を捕捉することである。これにより光とサンプルとの相互作用が強化され、信号の計測が容易になる」と実験研究者の1人、Dr. David Hungerは説明している。「通常の顕微鏡では、信号は入力パワーの100万分の1であり、計測不能である。この共振器を用いることで、信号は50000倍強化される」。
 研究チームが開発した顕微鏡では、共振器の片端が平面鏡になっており、これは調べているナノ粒子にとっては同時にキャリアとして働く。反対側は光ファイバの先端が強く湾曲したミラーとなっている。レーザ光は、このファイバを通して共振器に入ってくる。粒子が徐々に焦点に入るように、平面鏡が少しずつファイバに対して移動する。同時に、共振モードの条件が満たされるように両ミラー間の距離も調整される。これは、ピコメートルレンジの精度を要求する。
 最初の計測では、研究チームは直径40nmのゴールドスフィア(金の球)を用いた。「金粒子は参照系になる。その特性を高精度に計算する、われわれの計測の有効性を確認することができるからだ」とDavid Hungerは言う。「われわれは計測機器の光学特性を正確に知っているので、伝送信号を計算と比較し、その信号から粒子の光学特性を定量的に判定できる」。直接信号を強くすることに依存する他の方法と比べて、光照射野は非常に小さなエリアに限定されている。したがって基本モードだけを用いることで2µmの空間分解能が達成される。高次モードを組み合わせることで、分解能を800nm程度にも高めることができる。
 単一粒子の吸収特性と分散特性が同時に計測されると、この方法はさらに強力になる。もし粒子が球ではなく、例えば細長いと、これは特に興味深い。すると、対応する量は粒子の対称軸に対する偏光方向に依存する。「実験では、金ナノロッド(34×25×25nm3)を用い、偏光方向に依存してどのように共振周波数がシフトするかを観察する。偏光がロッドの軸に平行であれば、偏光が直交している場合と比較して共振シフトは大きくなり、2つの直交偏光で2つの異なる共振周波数が得られる」とPhD学生、Matthias Maderは説明している。「この複屈折性は非常に正確に計測でき、粒子の形状や方向の非常に高感度な指標となる」。
 David Hungerによると、この方法のアプリケーションとして研究チームは、タンパク質の折り畳みダイナミクスのような高分子の時間的力学の研究を考えている。「全体として、われわれの方法の潜在力は大きいと見ている。ナノ材料やナノ生体系から量子エミッタの分光学までが考えられる」。