June, 12, 2015, つくば-- 物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)の古月暁主任研究者と呉龍華NIMSジュニア研究員のグループは、光の透過や屈折を制御するフォトニック結晶において、光を含む電磁波が、表面のみを散乱することなく伝わる新しい原理を解明した。
蜂の巣状に配列された絶縁体や半導体の円柱(ナノロッド)の位置をわずかに調整するだけで、電磁波は結晶の角の部分や欠陥にも散乱されることなく伝わる。この性質は、シリコン等の半導体だけでも得られるため、現在広く普及している半導体技術による情報処理と優れた情報伝播機能との融合によって、新規機能の開発に繋がることが期待される。
近年、物質の表面だけに特別な性質が現れるトポロジカル特性を持つ物質の研究が、活発に行われている。フォトニック結晶においても、通常は光が結晶内を通過する際に欠陥などによって散乱するが、トポロジカル特性を実現することで、散乱することなく光の透過を制御することができ、光による効率のよい情報伝播機能を実現することが期待されている。しかし、トポロジカル特性をもつフォトニック結晶を作るためには、特殊な材料が必要とされていた。
研究グループは、複雑な物質や構造を一切使わずに、蜂の巣格子に配列した絶縁体や半導体のナノロッドの位置を調整するだけで、トポロジカル特性をもつフォトニック結晶が実現できる新しい原理を発見した。位置調整によってできたナノロッドの六角形クラスターには、スピンという従来電子にしかない特徴をもつ電磁波が現れる。その結果、六角形クラスター同士の間隔を小さくすれば、フォトニック結晶でトポロジカル特性が発現することが理論的に明らかになった。
ナノロッドの素材としてシリコンが使えるため、既存のエレクトロニクス技術との融合により、新規機能や新規デバイスの研究開発に新しい展開が期待される。
(詳細、Physical Review Letters)