May, 8, 2015, Evanston--ノースウエスタン大学の研究チームは、初の液体ナノレーザを開発した。しかもこれはリアルタイムチューナブルであるので、素早く簡単に異なる色(波長)を生成できる。このレーザ技術は、医療診断のような新しい「ラブ・オン・チップ」(lab on a chip)などの実用的なアプリケーションが考えられる。
リアルタイムで波長を変えられるだけでなく、このリクイッド・ナノレーザには他のナノレーザにない利点がある。作製が簡単、安価、室温動作が可能。
研究リーダー、Teri W. Odom氏によると、このリクイッドレーザはレーザポインタではなく、チップ上のレーザデバイスである。レーザキャビティの上の微小流体チャネルの液体染料を変化させる時にレーザの色は変わる。
レーザのキャビティは、反射金ナノ粒子アレイでできており、光が個々のナノ粒子の周囲に集中されて増幅される(従来のレーザキャビティとは違い、光の共振にミラーは不要)。レーザの色は変わるが、ナノ粒子キャビティは固定であり変わることはない。ナノ粒子周囲のリクイドゲインだけが変わる。
この極微小レーザのアドバンテージ
・オプトエレクトロニックIC用オンチップ光源として使える。
・光データストレージやリソグラフィに使用可能。
・1つの波長で高信頼動作が可能
・レーザは金属でできているので従来のレーザよりも遙かに高速動作が可能。
プラズモンレーザは、極微小サイズをサポートし、超高速ダイナミクスであるので、有望なナノスケールコヒレント光源になる。プラズモンレーザは、UVから近赤外まで幅広いスペクトルで実証されてきたが、リアルタイムでレーザ発振波長を操作する体系的なアプローチは可能ではなかった。
主要な限界は、これまでのプラズモンナノレーザ研究では、固体利得媒体だけが使用されてきたことにある。固体材料は簡単に改良できないので、固定波長となっていた。Odomの研究チームは、液体利得媒体と金ナノ粒子アレイを組み合わせてナノスケールプラズモン発振を達成する方法を見いだした。これにより、動的、可逆的にリアルタイムチューニングが可能になる。
液体利得媒体の利点は次の2つ。
・有機色素分子は、様々な屈折率を持つ溶媒に簡単に溶ける。したがって、ナノ粒子アレイ周囲の誘電環境をチューニングできる、つまり発振波長をチューニングできる。
・利得媒体を液体形状とすることで、マイクロ流体チャネル内で流体を操作できる。多様な屈折率の液体を流すことでレーザ発振のダイナミックなチューニングが簡単にできる。さらに、液体環境のもう1つの利点として、利得分子が絶えずリフレッシュされるので、レーザ・オン・チップデバイスは長期安定性を示す。
このようなナノスケールレーザは、色素の全利得帯域の発振波長で量産できる。同じ固定ナノキャビティ構造(同じ金ナノ粒子アレイ)は、色素が溶け込んでいる溶媒を替えることで、860~910nm、50nmで中ニングできる。