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高強度レーザによるスペースデブリ除去技術

April, 27, 2015, 和光--理化学研究所(理研)戎崎計算宇宙物理研究室の戎崎俊一主任研究員、光量子工学研究領域光量子技術基盤開発グループの和田智之グループディレクターらの共同研究グル―プは、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の除去技術を考案した。
数センチメートル(cm)サイズの小さなスペースデブリを除去する方法の提案は、初めて。これはエコール・ポリテクニークと原子核研究所宇宙物理センター/パリ第7大学(フランス)、トリノ大学(イタリア)、カリフォルニア大学アーバイン校(米国)との共同研究による成果。
スペースデブリは、地球衛星軌道を周回する不要な人工物体。近年宇宙開発の活発化に伴い増え続けている。2000年から2014年の間にスペースデブリの量は約2倍に増えているとされ、宇宙開発における大きな障害になっている。事故や故障で制御不能になった人工衛星、ロケット本体や部品から、スペースデブリ同士の衝突で生まれた微細なものまで、約3000トンのスペースデブリが宇宙を漂っており、それらが互いに異なる軌道をとることから、回収が難しくなっている。活動中の人工衛星や宇宙ステーションなどに衝突すれば、設備破壊だけでなく人命にも関わるため、効率的で実現可能な除去技術の開発が求められている。
共同研究グループは、軌道上から高強度レーザをスペースデブリに照射し、その結果生ずるプラズマの反力を使って減速させ、地球大気に再突入させて除去することが可能であることを示した。ファイバレーザを並列に用いれば、高強度・高効率・高頻度のパルスレーザシステムを宇宙機に搭載できる。また、EUSO型超広角望遠鏡を使って、近づいてくるスペースデブリを検出し、その軌道を決定する。
プロトタイプ望遠鏡システムを用いて技術実証を行い、最終的にはスペースデブリの密度が最も高い高度約800㎞の極軌道に打ち上げれば、5年程度で大部分のスペースデブリを除去できることが分かった。
この研究は、イタリア外務省の支援を受けて行われ、宇宙工学の国際的専門誌である「Acta Astronautica」誌に掲載されるのに先立ち、オンライン版(3月13日付)に掲載された。