April, 23, 2015, Chicago--新開発の分光法が、あまり明確になっていない分子プロセスを明らかにするのに役立つ。このプロセスでは、抗HIV薬がウイルスの遺伝物質において致死突然変異を誘発する。シカゴ大学とMITの研究成果は、次世代の抗ウイルス治療の開発を促進する。
ウイルスは、環境圧力に適応するために素早く突然変異する。この特徴によりウイルスは抗ウイルス薬に耐性ができる。しかし研究者たちは、致死突然変異誘発を使用して、HIV、C型肝炎、インフルエンザに対する抗ウイルス治療薬を開発した。
この戦略は、すでに高いウイルスの突然変異率を許容域以上に高めることによってウイルスを消滅させようとするものである。もしウイルスの突然変異があまりに多すぎると、ウイルスはその遺伝物質を適切に管理できない。
UChicago化学教授、Andrei Tokmakoff氏は、「ウイルスは複製できないので直ぐに消滅してしまう。これを可能にするには、ステルスの突然変異原が必要になる。ウイルスが、問題として認識できないような何かが必要になる」とコメントしている。
論文の共著者、MITのJohn Essigmann氏は、「細胞の自然環境、水溶液中でその構造を2D赤外分光計で見る」と言う。
研究者は、自然のDNA塩基、アデニンチミン、シトシングアニン塩基対を模倣するためにKP1212 のような致死性突然変異分子を設計している。「これらの類似物は間違った塩基パートナーと結合することができ、したがって遺伝子突然変異が起こる」と研究助手、Sam Peng氏は説明している。
KP1212は、シトシン変異であり、通常であれば複製中にグアニンとペアになる。しかし生物化学実験および臨床トライアルでは、KP1212がアデニンとペアになることで突然変異を誘発することを示した。主導的な提案は、KP1212が形状を変えることで、つまり窒素と酸素原子に対してその水素原子の位置を変えることで異なる分子構造に変わることで、変異原性を引き出すことを示唆している。
研究者は、形が変わったこの構造をトートマと呼んでいる。Peng氏によると、稀なトートマで水素の位置が変わることで水素結合パタンが変わり、間違った塩基ペアができる。
ほとんどの実験ツールは、正常構造と形が変わった構造との相互変換が非常に速いので、それらを区別することが難しい。2D赤外分光計を用いて研究チームは、これら2つの構造を区別することができた。また、生理学的条件下でその形態変化の速度を計測することもできた。それは、1秒の200億分の1であった。
研究チームは、優勢なトートマは2つしかないと考えていたが、もっと多く存在することを実験は示している。