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絵画調査用高分解のOCTで名画を調査

April, 22, 2015, Washington-- 西洋の名画では、絵の具の層がワニスで覆われていることが多い。時には、歴史的に異なる時期に数層に渡りコーティングされていることがある。
 ワニスは元来その下の絵の具を保護し、色がより生き生きと見えるようにするためのものだったが、何世紀も経過することでその劣化が進む。補修管理者は注意深く古いワニスを落として新しいワニスに換えるが、これを支障なく行うには、表面下の絵の具の材料や構造を知っておくことが役に立つ。保存の専門家は、絵の具やワニスの隠れた層を分析することで、こうした情報を収集する。
 ノッティンガムトレント大学(Nottingham Trent University)科学技術校の研究チームは、ロンドン国立ギャラリ(National Gallery in London)と提携して、作品の表面下の詳細を非侵襲的に高分解能で捉えることができる装置を開発した。
 現在、絵画の層を詳細に調べるには、非常に小さな物理的サンプルを採る必要がある。通常は1㎜の1/4程度のサンプルを採り、顕微鏡で観察する。この技術では絵画の層の横断面を採り、それを高分解能で画像化し分析して絵の具の化学組成について詳細な情報を得ることになるが、たとえ非常に少量とは言え、元の絵の具をある程度取り出す必要がある。貴重な傑作を調べるとき、保存研究家はすでに損傷を受けている部分から慎重に選択して採取しなければならない、大抵は大きなキャンバスからの極めて微小なサンプルになる。
 つい最近、研究チームは非侵襲的イメージング技術を使って絵画や他の歴史的芸術作品を調べ始めた。例えばOCTは、本来医療イメージング向けに開発されたものであるが、芸術保存にも適用されている。OCTは、物理的にサンプルを採ることなく、光ビームを使って完全なままの絵画をスキャンするので、OCTによって研究者はより後半に絵画を分析することができる。しかし、市販のOCTセットアップの空間分解能は絵の具やワニスの微細な層を完全に調査するには十分でない。
 ノッティンガムトレント大学の研究チームは、OCTをアップグレードした。「われわれは、非侵襲技術でどこまで行けるかを見ようとしている。従来の破壊的技術が到達した分解能には達したかった」とプロジェクトリーダー、Haida Liang氏は説明した。
 OCTでは、光ビームは分割される。半分はサンプルに、他の半分は参照ミラーに向かう。光は、これらの両方の表面で散乱する。統合した信号を計測する、つまりレファランスに対するサンプルからの戻り光を効果的に比較することで装置は、光がサンプルにどの程度まで浸透したかを判断することができる。一つのエリアでこのアプローチを何度も繰り返すことで、研究者は絵画の横断面マップを作成することができる。
 Liangのチームは、幅広い周波数を含む光を集中したビーム、ブロードバンドレーザのような光源を使用した。周波数の範囲が広いことで、より精度の高いデータ収集ができるが、そのような光源は最近まで市販されていなかった。
 他の2、3の変更と共に、ブロードバンド光源を加えたことで装置は高分解能で絵画をスキャンできるようになった。ロンドン国立ギャラリに収容されている16世紀のラファエルの複製でテストすると、装置は従来の侵襲的なイメージング技術と同等の性能を示した。
 「われわれは分解能を調整するだけでなく、レイヤー構造の一部をより鮮明なコントラストで見ることもできる。これは、OCTが特に屈折率の変化に敏感であるからだ」とLiang氏は説明している。所によって、この超高分解能OCTセットアップは、顕微鏡では相互に区別できないようなワニス層を識別した。
 最終的に研究チームは、装置を他の芸術研究機関でも使用できるようにすることを計画している。また、絵と同じような方法で物理的にサンプルを採ることができない歴史的な手書き原稿の分析でも使える。
 最近発表された論文によると、研究チームは装置がスキャンできる絵の深度を改善した。2つの目標は、いささか対立する。長波長光源を使うと深度は改善されるが、短波長(810nm)の方(現在の設定)が分解能が向上する。
 「次の課題は、1台でそれができるようにすることだ。また、異なる層から化学的情報を取り出すことも課題である」とLiang氏は語っている。