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定説を覆し、長距離量子通信に必要な「量子中継」の全光化手法を確立

April, 20, 2015, 東京--日本電信電話(NTT)とトロント大学の研究チームは、長距離量子通信に必要な「量子中継」に、「物質量子メモリ」が必須であるという定説を覆し、光の送受信装置のみで実現可能な「全光量子中継方式」を理論的に提唱した。これにより、全く新しい「光デバイスのみによる長距離量子通信」への道が切り拓かれた。
 量子通信の長距離化は、量子通信の市場創造や拡大に繋がるだけでなく、究極的にセキュアなネットワークによる安心安全な社会の実現へと繋がる可能性がある。この研究は、このような地球規模での量子通信ネットワーク、すなわち「量子インターネット」を全光ネットワークの未来像に据える発見。
 NTTとトロント大学の研究チームは、従来の「量子中継に物質量子メモリが必須」という定説を覆し、物質量子メモリを一切使わず、光の送受信装置のみで実現可能な「全光量子中継方式」を理論的に提唱した。この方式は、全く新しい「光デバイスのみによる長距離量子通信」への道を切り拓いただけでなく、現在の光通信ネットワークの究極的な未来像に「量子通信ネットワーク」を据えるものである。さらに、全光量子中継方式は物質量子メモリを利用する従来方式にはない以下のような利点を持ち、地球規模での量子通信ネットワーク、すなわち「量子インターネット」の可能性を大きく広げたと言える。

全光量子中継方式の比類なき利点
1.限界なき量子通信速度:従来方式は物質量子メモリの「メモリ機能」を利用するため、方式の動作中に「待ち時間」があり、そのため量子通信速度が制限されていた。しかし、物質量子メモリを利用しない全光量子中継はそのような制限を一切持たない。そのため全光量子中継は、通信距離に依らず、光デバイスの動作速度と同程度という極めて高速な量子通信速度が提供できる。
2.物質と光のインタフェースが不要:従来方式では物質量子メモリと、通信用の光子を結ぶために、原理検証段階にある「量子情報インタフェース」を必要としていた。全光量子中継は通信用の光子だけで実現可能であるため、これも一切必要としない。
3.全ての要素技術は原理検証済み: 全光量子中継に必要となる光デバイスは、線形光学素子、単一光子源、光子検出器、アクティブフィードフォワード技術であるが、これらの要素技術に対する原理検証は既に行われており、現状では物質量子メモリ研究よりも進展している。
4.常温動作:物質量子メモリを利用する場合には通常、雑音を抑える目的で物質量子メモリを極低温下におくことが要求されるが、全光量子中継は光デバイスのみに基づくため、原理的には常温で動作する。
5.量子コンピュータへの確実なマイルストーン:従来方式とは異なり、全光量子中継は(全光)量子コンピュータに比べ、格段に容易な技術であることが理論的に保障されている。これは、全光量子中継に基づく長距離量子通信が量子コンピュータよりも早期に実現することを意味しているだけなく、全光量子中継に必要となる光デバイスの発展の先に全光量子コンピュータが存在することを意味する。従って、全光量子中継は量子コンピュータへの確実なマイルストーンでもある。
6.量子情報処理における光子の「統一言語」としての側面の発見:既存の全光量子コンピュータに加え、今回の全光量子中継により、長距離量子通信までもが光子のみで実現可能であることが証明された。これは、任意の量子情報処理が「光子」を統一的な言語として書き下せることを保障しており、これまで「通信」と「計算」とで個別に議論されてきた量子情報処理を統一的に理解することを可能にする。