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芝浦工大,不可視光を可視化する有機結晶材料を開発

February, 25, 2026--人の目には見えない紫外光や近赤外光を、“色”として可視化できる新しい有機結晶材料を、芝浦工業大学工学部・堀顕子教授(分子集合学研究室)らの研究チームが早稲田大学、東京科学大学と共同し開発した。

この材料は、紫外光と近赤外光という異なる不可視光に応答し、単一の結晶で発色が切り替わるという二重の光特性を示す点が特長。
紫外光や近赤外光は、光通信、光計測、光加工、医療・分析分野などで広く利用されている一方、可視光とは異なり、直接目で確認することができない。そのため、不可視光を効率よく可視化したり、別の波長の光へ変換したりする材料は、基礎研究だけでなく産業分野においても重要な役割を担っている。

今回研究チームが開発した有機結晶材料は、単一の結晶でありながら、励起する光の種類によって異なる発光挙動を示す点が特徴。紫外光(365 nm)照射下では赤色発光(約613 nm)を示し、近赤外光(1050 nm)照射下では第二高調波発生により緑色光(525 nm)が観測された。このような二重の光応答特性を一つの有機結晶で実現することに成功した。

研究の概要
研究チームは、1,2,5-チアジアゾールを導入したピラジン誘導体を合成し、その単結晶の構造と光応答特性を詳細に調べた。その結果、この結晶は紫外光照射下で分子間相互作用(エキシマー形成)に由来する赤色発光を示し、吸収光と発光光の波長差が200 nmを超える非常に大きなストークスシフトを示すことが分かった。
さらに、同じ結晶に近赤外光を照射すると、結晶の非中心対称構造に起因する第二高調波発生が起こり、近赤外光が可視光である緑色光へと変換されることが確認された。

この研究の新規性は、単一の有機結晶において、紫外光に対する長波長可視発光と、近赤外光に対するアップコンバージョン型(第二高調波発生による)の短波長光変換という、異なる物理機構に基づく二つの光応答を同時に実現した点にある。これは、有機分子の設計と結晶構造制御によって、光応答を切り替えるという新しい材料設計の考え方を示しており、この研究成果はChemical Communications誌の表紙にも選出されている。

今後の展望
光波長を大幅に長波長領域に変換する蛍光・燐光やアップコンバージョンを生じる第二高調波のように、励起条件に応じて発光色を自在に制御できる材料は、エネルギー利用、光デバイス、光センシングなどの分野で強く求められている。特に、低エネルギーの近赤外光を可視光として取り出す技術は、エネルギー変換効率の向上や新しい光機能デバイスの実現につながる。研究で示した分子設計と結晶構造制御の考え方は、今後、発光色や光応答の波長を自在に調整できる有機材料の開発につながる可能性がある。不可視光を有効に利用するための基礎的指針として、工業材料への応用展開が期待される。

(詳細は、https://www.shibaura-it.ac.jp)

研究成果は英国王立化学会誌「Chemical Communications」のオンライン版に掲載されている。