January, 27, 2026, 大阪--大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻 DIAO ZHUO(刁琢)助教、奥山純矢(研究当時:大学院博士前期課程)、同研究科附属極限科学センター 阿部真之教授らの研究グループは、AIの手法を走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscopy; SPM)に組み込み、自律的に試料表面の単一原子を動かすことや取り上げることを可能にする技術を開発した。
AIが測定試料表面の状態を原子レベルで把握し、測定装置自身の状態を判断しながら、必要に応じて修正や調整を行い、自律的に個々の単原子を操作する。これまでのいわゆる自動計測とは異なり、人間に代わりAIが実験研究をする新技術である。
従来、室温環境での原子操作は熱揺らぎの影響により極めて困難だったが、この技術ではAIが連続的に状況を判断・対応することで、室温でのシリコン表面上に存在するAg原子の移動やピックアップに成功した。また、AIによる長時間の連続運転により、今後は、人手では不可能であった複雑な原子レベルのパターンの作製や、取得困難な大規模データの収集が可能となり、人間の能力を超えた実験の実現が可能となる。
今後、この手法を様々なSPM測定に応用することで、原子レベルでのデバイス動作検証や、単原子レベルでの化学反応の誘起・観察など、従来のアプローチでは不可能だった新しい発見や原理の解明につながると期待される。
この技術は、原子レベルの精密な研究をより効率的かつ再現性の高いものへと変革し、ナノテクノロジー研究をさらに発展させるものである。
研究の内容
研究グループでは、AIの手法をSPMに組み込んだ自律原子操作システムを開発した。このシステムの最大の特徴は、AIが人間に代わって原子レベルの実験を自律的に遂行できる点にある。具体的には、AIが試料表面の状態を画像認識により原子レベルで把握し、探針の状態や装置のコンディションを常に判断しながら、必要に応じて修正や調整を行い、単一原子の操作を実行する。
特筆すべきは、従来極めて困難とされてきた室温環境での原子操作を実現した点である。室温では熱揺らぎにより原子が不規則に動くため、人間による手動操作では安定した原子操作がほぼ不可能だった。このシステムでは、AIが瞬時に状況を判断し連続的に対応することで、この課題を克服した。実際に研究グループでは、シリコン表面上に吸着したAg原子を狙った位置へ移動させたり、表面から取り上げたりすることに成功している。
さらに、AIによる長時間の連続自律運転により、人手では到底実現できなかった大規模な実験データの取得が可能となった。加えて、複雑な原子配列パターンの作製など、高度な精度と忍耐力を要する作業もAIが担うことで、人間の能力を超えた実験が実現する。この技術は、原子レベルでのデバイス動作検証や単原子レベルでの化学反応制御など、ナノテクノロジー研究の新たな可能性を切り拓くものと期待される。
研究成果は、12月16日(火)米国科学誌「Nano Letters」のオンライン版で公開された。
(詳細は、https://resou.osaka-u.ac.jp)