April, 1, 2015, 東京--東京大学大学院工学系研究科の古澤明教授のグループは、量子テレポーテーション装置の心臓部である量子もつれ生成・検出部分の光チップ化に成功した。
この光チップでは、これまで約1平方メートルの光学定盤上に非常に多くの光学素子を配置して構成していた量子もつれ生成・検出部分を、26×4㎜のシリコン基板に微細加工したガラスの光回路により実現した。これは1万分の1の大きさに縮小したことになる。この成果は超大容量光通信や超高速量子コンピュータの実用化へ向けて突破口となるもので、拡張性の問題を一挙に解決した。
この研究はイギリス・ブリストル大学のオブライエン教授、サウサンプトン大学のポリティ講師との共同研究による成果で、文部科学省・先端融合領域イノベーション創出拠点の形成プログラムなどの支援のもとに行われた。
量子力学の原理を応用することで、現代技術の限界を超える究極的な大容量通信(量子通信)や超高速コンピュータ(量子コンピュータ)が実現できると予測されている。その実現には、光子に乗せた量子ビットの信号を転送する量子テレポーテーションの技術を確立することが最重要課題の一つであるが、従来の量子テレポーテーション装置は、大きな光学定盤上に何百もの光学素子を配置して実現されており、拡張性において限界に達していた。
今回、古澤教授らのグループは、量子テレポーテーション装置の心臓部である量子もつれ生成・検出装置の光チップ化に成功。この光チップでは、これまで約1平方メートルの光学定盤上に非常に多くの光学素子を配置して構成していた量子もつれ生成・検出部分を、26×4㎜(0.0001平方メートル)のシリコン基板上に半導体微細加工技術を用いて作製される石英系光導波路回路として実現している。これは、従来比で1万分の1の小型化に成功したことになる。研究グループは、この光チップを用いて量子もつれ光を生成し、その検出を光チップ内に配置された干渉計を用いたホモダイン検出により行い、量子もつれ生成を検証した。今回の成功により、古澤教授らが2013年に成功した完全な量子テレポーテーションを光チップにより行うことが可能になった。この成果は超大容量光通信や超高速量子コンピュータの実用化へ向けて突破口となるもので、拡張性の問題を一挙に解決した。