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地上-衛星間光通信における大気ゆらぎの影響を克服する次世代誤り訂正符号の伝送に世界で初めて成功

October, 31, 2025, 東京--情報通信研究機構(NICT)と名古屋工業大学(名工大)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、大気ゆらぎの地上-衛星間光通信への影響を克服するための次世代誤り訂正符号の実証実験に世界で初めて成功した。

地上-衛星間光通信回線において大気ゆらぎがフェージングを引き起こし、誤りデータを連続して発生させていることが明らかになっているが、そうした影響を克服する技術の一つとして誤り訂正符号がある。
今回、高い誤り訂正能力を持つ次世代誤り訂正符号(5G NR LDPCとDVB-S2)を伝送した結果、地上-衛星間光通信回線で生じた誤りデータの訂正に成功し、従来よりも通信品質の向上に寄与できることを確認した。

この成果により、これらの符号を適用することで、地上-衛星間光通信回線の実用化に貢献することが期待される。

今回の成果
NICTは、1m光地上局とLUCASとの間の地上-静止衛星間光通信回線の60 Mbpsダウンリンクを用いて、名工大と共同で5G NR LDPCとDVB-S2を含む次世代誤り訂正符号の伝送実験を実施した。その際に、フェージングによる誤りデータの訂正に向けて、これまでNICTが取得してきた大気ゆらぎの知見を元に、インタリーバと誤り訂正符号の条件を調整した。この実験で得られた伝送実験データを解析した結果、大気ゆらぎのフェージングにより連続して発生した誤りデータの訂正の実証に成功し、5G NR LDPCとDVB-S2が従来よりも通信品質の向上に寄与できることを世界で初めて確認した。
今回の実験で伝送した5G NR LDPCとDVB-S2は、高い誤り訂正能力だけでなく、ハードウェアへの実装容易性や、将来的な5G通信システムとの相互接続が可能である点で、地上-衛星間光通信への活用に期待が持たれている。

今後の展望
この成果は、地上-衛星間光通信回線の通信品質を向上させ、実用化を促進するものである。これにより、現在地上で使用されている5G通信プロトコルと衛星放送の宇宙ネットワークへの適用が可能となる。今後、将来の地上-衛星間光通信システムにおけるこの技術の活用が見込まれる。
研究成果は、2025年10月28日(火)に、宇宙光通信関連の国際会議であるInternational Conference on Space Optical Systems and Applications (ICSOS) 2025にて発表される予定である。
(詳細は、https://www.nict.go.jp)