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京都大学、光で分解可能な高分子を開発

October, 28, 2025, 京都--京都大学、高分子化学専攻の黒田啓太博士後期課程学生、大内誠教授のグループは、配列制御ラジカル共重合と重合後修飾反応によってケトンのカルボニル基が周期的に導入された高分子の合成手法を開発した。得られた高分子(ポリマ)は熱的に安定でありながら紫外(UV)光で分解可能だった。

プラスチックやゴムとして用いられる高分子は、安定な材料として使われる一方で、分解されにくく、環境問題の大きな要因となっている。研究チームは、「ノリッシュ反応」と呼ばれる光化学反応を引き起こすケトン骨格を高分子に周期的に組み込むことで、光照射によって主鎖を分解できる「光分解性高分子」の開発を目指した。そこでケト-エノール互変異性によるケトン骨格の導入を考え、トリメチルシロキシ基とメトキシ基を有するブタジエンモノマ(SBD)とペンタフルオロフェニルアクリレート(PFA)の交互共重合と重合後修飾反応によって、アクリルアミド・ケトン・メチルビニルエーテル単位が周期的に並んだ交互三元共重合体を得ることに成功した。ガラス転移温度(高分子がガラス状態からゴム状態へ変化する温度)が室温以下の場合、得られた高分子はUV光を照射すると固体(バルク)状態で効率的に分解が進行した。

研究成果は、ケトン骨格を高分子分解のモチーフとして利用できることを示した点にあり、今回の分子設計は「使うときは安定で丈夫、廃棄するときは光で分解できる」という新しいタイプの高分子材料の開発につながるものである。将来的には環境に優しい高分子材料開発や持続可能な材料科学に大きく貢献すると期待される。

研究成果は、2025年10月15日に、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン版に掲載された。
(詳細は、https://www.t.kyoto-u.ac.jp)