October, 14, 2025, 東京--情報通信研究機構(NICT)は、単一光子間の和周波発生を用いた量子もつれ交換(量子通信プロトコルの一つ)の実証に成功した。
単一光子の非線形光学効果は、量子通信プロトコルを高度化する際に重要なツールとなることが理論的に知られているが、極めて弱い光に対する同効果は非常に小さく、応用は実現されていなかった。
今回、NICTが開発した高速量子もつれ光源・低ノイズ超伝導単一光子検出器・高効率非線形光学結晶の最先端技術を組み合わせることで、非線形光学効果の一つである単一光子間の和周波発生を極めて高いSN比(所望信号とノイズの比率)で観測し、それを用いた量子もつれ交換実証に世界で初めて成功した。今後は実験系をさらに高効率化することで、光量子計算回路の小型・高効率化や次世代量子鍵配送の長距離化が期待される。
今回の成果
この研究では、NICTの持つ最先端技術(高速量子もつれ光源、低ノイズ超伝導単一光子検出器、高効率非線形光学結晶)を組み合わせて実験系を構築した
その結果、和周波光子の信号は高いSN比で検出され(先行研究[2]と比較して約1桁近く高いSN比を達成)、終状態に強い量子もつれが存在していることを確認し(最大量子もつれ状態との忠実度の下限を推定すると0.770±0.076)、世界で初めて単一光子間の和周波発生による量子もつれ交換の実証に成功した。
今回得られた結果は光量子情報処理における大きな一歩であるとともに、今後新たな非線形光学デバイスを開発する際の重要な指針となることが期待される。
今後の展望
この手法を量子もつれ交換よりもさらに高度な量子情報プロトコルへ応用するには、さらなるSN比の改善が必要であると見込まれる。今後は、非線形光学効果の増強を実現させ、光量子計算回路の小型・高効率化や次世代量子鍵配送の長距離化につなげていきたいと考えている。
研究成果は、2025年10月7日(火)に、英国科学雑誌「Nature Communications」に掲載された。
(詳細は、https://www.nict.go.jp)