October, 3, 2025, 東京--NTT株式会社(NTT)は、メガヘルツ帯の機械振動をレーザ光により自在に励起・制御できるオプトメカニカル素子を用いて、これまで困難であった複数の同期状態の生成に成功し、それらの間を瞬時に遷移させる技術を実証した。
同期現象は、生体系などの複雑系に広く現れる現象であり、ここで創発する記憶や学習といった高度な「機能」との密接な関わりが示唆されている。この成果によって、光で設計可能な振動子間の同期のリアルタイム制御が達成されたことにより、多様な相互作用が生み出す高度な「機能」を搭載した新たな生体模倣技術の実現が期待できる。
技術のポイント
①独自のファイバ型オプトメカニカル素子
NTTがノウハウを有するガラス加工技術を駆使し、髪の毛程度の細さのガラスファイバ上にくびれを導入したオプトメカニカル素子を作製した。この素子のくびれに挟まれたボトル形状の部分では、この部分が膨張・収縮する「機械振動」と、表面を光が全反射で周回する「光共振」が互いに影響を及ぼしあう。このボトル形状を調整することにより、異なる周波数を持つ2つの機械振動を同時に利用することが可能となる。この独自設計により、光と相互作用する2つの機械振動子(メトロノーム)を1つの微小構造に備えたオプトメカニカル素子を実現した。
②光強度変調による機械振動子間の同期の達成
振動子の間に同期を実現するためには、振動子(メトロノーム)間をつなぐ結合(土台)が必要となる。
研究では、2つの機械振動子の周波数差で強度変調した光を用いることで、振動子間に結合を生み出す新手法を確立し、振動子間の同期を達成した。さらに、非同期状態と同期状態を比較したところ、この手法により周波数差のばらつきが約1000倍以上抑えられ、高い周波数安定化が得られることを確認した。
③光変調のシンセサイズによる位相スリップの精密制御
位相スリップとは、同期している2つの機械振動子の相互関係が、振動一回分あるいは整数分の一の単位でずれる現象。この位相スリップを引き起こすことにより、異なる同期状態の遷移を引き起こすことができる。今回、同期状態を多重化する特殊な結合効果を光で誘起し、その強さと周波数を時間的に変化させることで、位相スリップを所望のタイミングで発現させる新手法を確立した。
この成果は、2025年9月17日(米国時間)に米国学術誌「Science Advances」に掲載された。
(詳細は、https://group.ntt/jp)