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量子コンピュータ実現の大きな壁「コスト増大」を回避

September, 24, 2025, 東京--東京大学大学院情報理工学系研究科の山崎隼汰准教授らの研究グループは、マサチューセッツ工科大学(MIT)のアダム・ウィルズ大学院生、フォックスコンの謝明修博士と共同で、有用な量子コンピュータの実現に欠かせない「魔法状態」のノイズを効率よく取り除く新しい方法を開発した。

有用な量子コンピュータを実現するためには、ノイズの影響を取り除くことが不可欠で、特に「魔法状態」と呼ばれる量子状態のノイズを減らす「魔法状態蒸留」という処理が中心的に使われる。研究では、魔法状態蒸留でノイズをどれだけ減らしても、そのためのコストを一定の定数以下に抑えることが可能であることを初めて明らかにした。

従来の方法では、ノイズを減らそうとすればするほど、際限なくコストが増大してしまうという問題があった。この問題を回避するために、高いノイズ除去能力とコスト効率を両立できる新しい量子エラー訂正符号を作り、コストの増加を防ぎながらノイズを除去できる方法を開発した。
今回の成果は、こうしたコスト増加を防ぐ設計ができることを初めて示したものであり、今後の量子コンピュータ開発に新しい可能性や方向性をもたらすことが期待される。

この研究成果は、英国夏時間2025年9月16日10時(日本時間9月16日18時)に国際学術誌「Nature Physics」に掲載された。

(詳細は、https://www.i.u-tokyo.ac.jp