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目のないサンゴはどのように見るのか

September, 18, 2025, Washington--日本とスイスの研究者らは、これらの海洋無脊椎動物の光感知能力の化学的根拠を発見したと報告されている(eLife、doi:10.7554/eLife.105451)。サンゴが光を検出するために使用するタンパク質は、可視光と紫外線の視覚を切り替えるために環境からの塩化物イオンに依存している。このpH依存性の視界は、サンゴと光合成する藻類およびより広い生態系との共生関係への手がかりを提供している。

視覚のタンパク質
動物の目にはオプシンと呼ばれる光感受性分子が含まれており、発色団分子に結合して色素を作る。色素は、入射光子を動物が視覚として認識する電気化学信号に変換する。ほとんどの動物は、感覚カスケードを引き起こす発色団として、ビタミンAに関連する物質であるレチナールを使用する。オプシンから分離されたレチナールの吸収は、スペクトルのUV領域でピークに達する。ただし、網膜がオプシンに結合すると、ピークは可視範囲にシフトする。このプロセスによりわずかな正電荷が発生し、すべてを安定させるには負に帯電した「対イオン」の存在が必要になる。

アントゾア(Anthozoa)亜門の一部であるサンゴ礁形成サンゴには、アンソ動物特異的オプシン(ASOs)と呼ばれる様々なオプシンがある。これらのASOsには、他のほとんどの動物のオプシンで対イオンとして作用するアミノ酸は含まれていない。

光感度の調整
大阪公立大学に拠点を置く科学者らは、アクロポラ・テヌイス種のサンゴからオプシンを抽出し、その成分アミノ酸の吸収スペクトルを測定した。研究チームはアミノ酸を様々なハロゲン化物溶液にさらし、次に海水に豊富に含まれる様々なレベルの塩化ナトリウムを含む溶液にさらした。

研究チームによると、オプシンタンパク質の特定の位置にあるグルタミン酸配列は、必要な対イオンとしての負塩化物イオンの使用を促進する。「塩化物イオンは、アミノ酸よりもシッフ塩基(発色団とオプシンの間の結合の一種)を弱く安定させることを発見した。したがって、オプシンはpHに応じて可視光感受性と紫外線感受性を可逆的に切り替えることができる」と筆頭著者の酒井 祐輔博士研究員(研究当時)は声明で述べた。より低いpH条件下では、陽子が少なくなると、より長い波長の光が吸収される。pH が高いと、プロトンはシッフ塩基から離れ、紫外線に対してより敏感になる。

共生光合成藻類はサンゴに栄養素を提供し、サンゴ細胞内のpHを変化させる。したがって、研究チームは、サンゴはホストする藻類の活動レベルに基づいて光感受性を調整すると示唆している。

研究チームは、その発見がサンゴ生物学の理解を深めるだけでなく、新しいバイオテクノロジーにインスピレーションを与えることを期待している。「アクロポラ・テヌイスのASO-IIオプシンは、光依存性でカルシウムイオンを調節することが示されており、pHによって波長感度が変化する光遺伝学的ツールとしての潜在的な応用を示唆している」と小柳光正教授はコメントしている。