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OIST、ペロブスカイトを利用した高効率太陽電池の新素子

March, 18, 2015, 沖縄--沖縄科学技術大学院大学(OIST)のエネルギー材料と表面科学ユニットの研究グループは 、大気中で作製された太陽電池フィルムが高い光電変換効率を示すことを、発見した。この研究成果は、太陽電池の製造コストの大幅な削減につながる可能性を秘めており、米化学会の学術誌Chemistry of Materialsに掲載された。
 今回の研究で使われたのは、ペロブスカイトと呼ばれる材料。このペロブスカイトが光を吸収して電気に変換させると2009年以降、世界で太陽電池研究が急速に活発化した。今では、より高い光電変換効率を目指して、世界中の研究者らが製造技術の開発にしのぎを削っている。OISTでの研究により、ペロブスカイト太陽電池材料の量産化がすすむことが期待される。
 これまでの研究結果、ペロブスカイトの塗布膜を外気にさらすと、空気中の水分とペロブスカイトが反応を起こし、フィルムの経年劣化を引き起こすと言われてきた。この理由から、ペロブスカイトを製造する際には、水分を除去した環境をつくりだすアニーリング(焼きなまし)と呼ばれる熱処理が必要だと信じられてきた。
 OISTの研究グループは、湿気がペロブスカイト形成に与える影響を調べるために、105~125℃の温度下でアニーリング処理を45分間行った。その結果、太陽電池により適したペロブスカイトの作製に成功した。その後、同研究グループは窒素環境下で形成されたフィルムと、湿気を帯びた空気中で形成されたフィルムを比較した。水分を含んだ空気中で作製されたフィルムには、通常より大きな結晶粒が形成され、材料の性質に大きな改善が見られた。フィルムは時間をかけて形成されるため、結晶粒もより大きなものへと成長する。
  「結晶粒が大きいと、フィルム上の結晶断面が連続的になり、フィルム表面を移動する電子の流れがスムーズになります。」と、論文の筆頭著者、ルイス・ラガ・ソニア博士は言う。
 大型の結晶粒は、ペロブスカイト太陽電池の効率化につながる。今回の研究では、最高12.7%という高水準の光電変換効率を達成。世界を見やると他の研究チームの間でも高い変換効率の向上に成功しているが、OISTの研究成果の優位性は、空気中の水分を100万分の1レベルまで減少するための高価な環境制御機器を必要としないところにある。これにより、特別な環境を必要としないエア・アニーリング処理にはコストがほとんどかからない。
 同様の製造技術において、現在の12.7%という水準が変換効率の頭打ちというわけではなく、この先さらに大きな結晶粒が得られる可能性がある。