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波長可変レーザ光、リングデザインは、通信、医療などで使用できる

July, 22, 2025, Cambridge--ハーバード大学ジョン・A・ポールソン工学応用科学大学院(SEAS)とウィーン工科大学(TU Wien)の研究者は、今日の最先端のレーザ製品の最高の属性を組み合わせた新しいタイプのチューナブル半導体レーザを発明し、シンプルなチップサイズの設計でスムーズで信頼性の高い広範囲の波長調整を実証した。

チューナブルレーザ、即ち光出力波長を変更および制御できるレーザは、高速通信から医療診断、ガスパイプラインの安全検査まで、多くの技術に不可欠である。とは言え、レーザ技術には多くのトレードオフがある。例えば、広範囲の波長や色で放射されるレーザは、各色の精度を犠牲にしている。しかし、多くの色に正確に調整できるレーザは、一般的に可動部品を必要とするため、複雑で高価になる。

新しいハーバードのデバイスは、いつの日か、より小さく、より費用対効果の高いパッケージで多くのタイプのチューナブルレーザを置き換える可能性がある。

この研究はOptica誌に掲載され、SEASのRobert L. Wallace応用物理学教授およびVinton Hayes電気工学上級研究員であるFederico Capassoと、TU WienのBenedikt Schwarz教授が共同で主導した。この2つのグループは、長年にわたる研究パートナーシップを結んでいる。

研究チームは、そのアーキテクチャのベースとなっている量子カスケードレーザが通常、中赤外波長範囲で光を放出するレーザを最初に実証した。「この新しいプラットフォームの汎用性は、テレコムアプリケーション、医療診断、または可視光スペクトルで発光する任意のレーザなど、より商業的に関連する波長で同様のレーザを製造できることを意味する」と、1994年に量子カスケードレーザを共同発明したCapassoはコメントしている。

新しいレーザは、それぞれがわずかに異なるサイズの複数の小さなリング状のレーザで構成され、すべて同じ導波路に接続されている。各リングは異なる波長の光を放射し、電流入力を調整することで、レーザは異なる波長間でスムーズに同調可能である。巧妙でコンパクトな設計により、レーザは一度に1つの波長のみを放射し、過酷な環境でも安定した状態を保ち、簡単にスケーリングできる。リングは一度に1つずつ、またはすべて一緒に機能して、より強力なビームを作る。

「リングのサイズを調整することで、必要なラインやレーザ周波数を効果的にターゲットにすることができる」と、MITの大学院生でハーバード大学のCapasso研究室の研究員である共同筆頭著者のTheodore Letsouはコメントしている。「すべてのレーザからのすべての光は、同じ導波路を介して結合され、同じビームに形成される。これは非常に強力であり、一般的な半導体レーザの同調範囲を広げることができ、異なるリング半径を使用して個々の波長をターゲットにすることができる。」

「われわれのレーザの本当に素晴らしいところは、製造のシンプルさである」と、共同筆頭著者でTU Wien大学院生、Johannes Fuchsbergerは付け加えた。チームは同大学のマイクロ・ナノ構造センタが常設するクリーンルーム施設を使用してデバイスを製造した。「機械的に可動する部品はなく、簡単な製造スキームにより設置面積が小さくなる。」

レーザのユニークなアーキテクチャは、光学フィードバックなどの一般的な問題や、一部のレーザ光が光源に逆方向に反射して不安定化を引き起こす可能性がある場合にも保護する。新しいレーザのリングは時計回りまたは反時計回りに一方向で放射されるため、後方反射の可能性はない。

新しいリングレーザは、アプリケーションに応じてそれぞれに長所と短所がある様々なタイプのチューナブル半導体レーザの現行技術に取って代わる可能性がある。例えば、分布帰還型レーザ(DFBLD)は、滑らかで正確なビームを出すため、通信用ファイバで光信号を長距離伝送するために使用されているが、チューニングレンジは狭い。一方、外部共振器レーザは、チューニング範囲が広いが、設計や可動部品が複雑であるため、レーザラインが飛び飛びになりやすい。これらは、異なる波長の光を吸収するメタンや二酸化炭素などのガスを検出できるため、パイプラインの漏れをテストするガスセンサで一般的に使用される。

この論文は、Dmitry Kazakov とRolf Szedlakが共同執筆した。このチームは、ハーバード大学技術開発局およびTU Wien特許・ライセンス管理事務所と協力して、基礎となる知的財産の保護に取り組んでおり、将来的にはこのアイデアを商業化することを目指している。