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極薄形状可変ミラーを実現、 X線ビームの大きさが3400倍変化

July, 10, 2025, 名古屋--名古屋大学大学院工学研究科の井上陽登助教、松山智至教授(兼:大阪大学大学院工学研究科招へい教授)、理化学研究所放射光科学研究センターの矢橋牧名 グループディレクター、香村 芳樹 チームリーダーらの研究グループは、薄い圧電単結晶ウエハ1枚のみで構成された形状可変ミラーの作製に成功した。
形状可変ミラーは様々な分野で活用されており、近年X線集光システムにおける光学パラメータ可変レンズとして注目されている。しかし、これまでにも様々な形状可変ミラーが開発されてきたが、変形量の大きさが十分ではなかった。その理由として、変形量を大きくするためにはミラーの厚みを可能な限り薄くする必要があるが、従来のミラーは異種材料の接合が不可欠なため、構造的に限界があった。
研究グループは、圧電単結晶であるニオブ酸リチウム(LN)の分極反転特性に着目した。LNは約1000℃の高温で加熱されると、分極構造が一部変化する。この特性を利用すると接合することなくバイモルフ構造を形成できるため、ミラーの厚みを極限まで薄くすることが可能となる。実際に、厚みが僅か0.5mmのミラーを開発し、その形状を制御することで、X線ビームサイズを3400倍変化させることに成功した。
この成果によりビームサイズなどの光学パラメータを大きく変えることで、X線分析の視野や分解能を変更できるだけでなく、分析手法を切り替えることができる多機能型X線分析が可能となる。また、このミラーは更なる薄型化が可能であり、例えば0.01mmオーダーまで薄くできる。その場合の変形量は、今回の成果よりもさらに100倍程度大きくなると計算されるため、X線領域だけでなく、可視光など幅広い波長領域で活用できると期待される。

研究成果は、2025年6月27日18時(日本時間)付で英国科学誌『Scientific Reports』に掲載された。
(詳細は、https://resou.osaka-u.ac.jp)